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    学校をネットワーク化する その2


    国際大学GLOCOM 豊福晋平
    toyofuku@glocom.ac.jp

    第2期のつづき


       LANに用いたLocalTalkは、Macintosh全機種に装備されている標準的なネットワーク手段である。現在主流となっているEthernetに比べると、スピードが遅い、マシンに負荷がかかる、などの欠点があるが、導入に際してのマシン1台あたりのパーツコストを4分の1程度に抑えることができる。また、敷設に用いたPhoneNetは、普通の電話用4芯フラットケーブルとモジュラージャック(RJ-11)を使って、マシンを数珠繋ぎにしてゆくものなので、工事が比較的容易であること、配線材を安くあげることができることが大きなメリットだ。仮設でLANを敷設した中川西の場合は、それよりもなによりも、いいかげんなつなぎ方をしても、なんとか使えてしまえる堅牢さが大いに役に立ったと言えるだろう。中川西のネットワーク工事は、ボランティアと先生方をかき集めてえいや!でやってしまった素人芸なので、配線業者が見たらきっと唖然とするような代物だ。職員室を出た線は放送室を経由し、途中野ざらしの中庭を横断して2階の窓まで延びるような格好になっていた。さすがにこの部分は現在引き替えてしまったが、大半の部分は今でも現役だ。


      図 RJ-11プラグ
       普通の電話の接続に使われるものだ

      図 PhoneNet
       写真のようにMacintoshを数珠繋ぎにしてゆく

      図 第2期でのネットワーク配線図
       距離をかせぐために大胆にも中庭横断をしていた

      図 廊下にPhoneNetの線を固定する
       金具や粘着テープ付きのフックで止めてゆく

      図 分岐コネクタと教室用延長配線
       コネクタは電話用に一般市販されているもの

       職員室に設置されたFirstClassサーバは、クライエントとして東京に直接電話するのと比べ3点のメリットがある。ひとつめは、一日数回東京のNOCとゲートウェイ、つまり蓄積された電子メールや電子会議室のメッセージを互いにまとめて交換することで、センターのサーバと状態をシンクロさせることができる、というものだ。この方法だと、たとえ、子供達が学校の電子会議室に何時間入り浸っていても、電話代はサーバ同士がゲートウェイを行っている時間しかかからない。まさにネットワークをじゃぶじゃぶ使うにはもってこいのシステムといえる。もっとも、巨大なファイルサイズのデータを送ったがために、ゲートウェイの時間が異様に長くなってしまったり、メールの到着にタイムラグが生じる、という欠点はあるのだが。
       学校にサーバを置く2つめのメリットは、ネットワーク参加のためのIDを学校側で管理できる、ということだ。クラス替えや転入転出など、自動生徒用のIDは割と頻繁に変更が発生するものだし、先生方や保護者のIDなども臨機応変に発行・訂正することが可能である。
       3つめの理由は、全国版のメディアキッズの会議室のほかに学校独自の会議室を自在に設定できる、ということだ。中川西で学校内の電子会議室が本格化するのは次の第3期からになるが、この時期に試験的にいくつかの会議室が用意され、この後の学校電子会議室群の原型となっていった。

    (解 説)

       第2期のポイントは、ひとつは、とりあえず使える構内LANをどう安価に引いてしまうか、というところにある。中川西のケースのように構内LANを業者に委託できるほど予算がない、とか、仮でもいいからとにかくネット化したい、という場合には有効な策ではある。

       将来のことを考えると、正直言ってスピードに難があるLocalTalkはあまりお奨めできないが、現状ではインターネット接続の際の外線のスピードがLocalTalkよりも遅かったりするので、実際はほとんど問題にならない。また、Ethernetと比べると配線に必要な機器の値段が圧倒的に安く、いいかげんな素人工事でも何とかつながってしまう。PhoneNetの場合は、もともと4芯のフラットケーブル電話線を共用するように考えられた規格なので、4芯のうち外側の2本しか使わない(電話は普通4芯のうち中2本を使用する)。各教室にインターホンの線が引かれている場合は、インターホンと共用できる可能性もある(当然4芯の線が引かれていて、インターホンが2本しか使っていない場合に限るが)。

       もうひとつのポイントは、学校に設置されたコミュニケーションサーバ(FirstClass)にある。1日数回のゲートウェイでサーバ間の情報をシンクロさせる方法は、古くはインターネットの世界でも行われていた、わりとポピュラーなやり方だ。昔は今ほどインターネットの通信回線が普及してなかったので、一般公衆電話回線を使ってメールをサーバからサーバへバケツリレーするのが普通だった。FirstClassサーバのゲートウェイ方法を用いると、リアルタイムに情報を得ることはできないが、利用者は思う存分電子会議室での議論やメール書きに没頭でき、通信コストも比較的安く上げることができる。インターネットに常時接続するのが予算的に難しい場合は、FirstClassに限らずこのようなゲートウェイ型サーバの導入には一考の価値がある。


      図 サーバ間ゲートウェイの仕組み
       通信コストを安く上げるための一つの工夫である

       さらに、メインテナンスという観点からいうと、この時期に中川西としてははじめてネットワーク関連のサーバが導入されたことになる。これまでは、クライエントつまりお客として参加していたので、難しい事はすべて東京のNOCにおまかせだったわけだが、サーバをかまえると自由度が増す反面、その維持管理を行う必要が出てくる。

       コミュニケーションサーバ(FirstClassサーバ)の管理は、主にIDや会議室の設定、外部センターとのゲートウェイ、サーバ内容のバックアップなどがある。操作がほとんどグラフィカルインターフェースになっているので、unixマシンや他のインターネットサーバ管理に比べればオペレーションははるかに楽だが、やはりちょっとしたコツと慣れが要る。筆者の個人的な見方に過ぎないが、普通の先生が空き時間を使って片手間でちょこちょこ出来るのはFirstClassサーバが限度ではないだろうか。学校にネットワークサーバを構えるとなると、性能重視で本格的unixサーバをいきなり入れてしまうケースもままあるようだが、これでは操作技術も知識も追いつかず、結局外部からの支援に頼り切ってしまうことになりかねない。


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