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    ABSモデル集

    オオカミとヒツジモデル

      注:このモデルおよび解説の原典は米国タフツ大STARLogoTで公開されている「オオカミとヒツジ」モデルである。翻訳やABSへの移植に際して若干の変更が加えられている。

    設定ファイル

      オオカミとヒツジモデル(ZIP/ABS設定ファイル)

    解説

     このモデルは、弱肉強食(predator-prey)の生態系を探索するものである。このような系では、1つまたは複数の種が絶滅する結果傾向にあると不安定になるといわれている。一方、人口サイズが動揺しても種を継続的に維持する傾向にある場合は、系は安定する。つまり、このモデルには主として2つのバリエーションが存在するといえる。

     最初のバリエーションにおいては、オオカミとヒツジはランダムにマップ上に置かれる。各ステップごとにオオカミは体力を消費するので、体力を補充するためにヒツジを食べなくてはならない(体力が0になるとオオカミは死んでしまう)。人口規模を維持するために、それぞれのオオカミやヒツジはステップごとに繁殖する確率を固定で与えられている。このバリエーションは興味深い人口ダイナミクスを生じるが、最終的には不安定なものとなってしまう。

     2つめのバリエーションは、オオカミとヒツジの関係に牧草の要素を加えたものである。オオカミの振る舞いは1つめと同じだが、今度はヒツジが自分の体力を維持するために、牧草を食べなければならない(ヒツジも体力が0になると死んでしまう)。一度牧草が食べられてしまうと、一定時間後にならないとまた食べられるようにならない。このバリエーションは1つめよりも複雑だが、一般的に安定的である。

    このモデルについては以下の文献に詳細が述べられている

    • Wilensky, U. & Reisman, K. (forthcoming). Thinking like a Wolf, a Sheep or a Firefly: Learning Biology through Constructing and Testing Computational Theories -- an Embodied Modeling Approach.
      http://www.ccl.tufts.edu/cm/papers/bio/bio-long.html
    • Wilensky, U. & Reisman, K. (1998). Learning Biology through Constructing and Testing Computational Theories -- an Embodied Modeling Approach. In Y. Bar-Yam (Ed.), Proceedings of the Second International Conference on Complex Systems. Nashua, NH: New England Complex Systems Institute.
      http://www.ccl.tufts.edu/cm/papers/bio/bio-short.html

    変数設定

    ヒツジの数初期状態のヒツジの数
    オオカミの数初期状態のオオカミの数
    ヒツジの繁殖率ヒツジが各ステップごとに繁殖する確率(0だと繁殖しない)
    オオカミの繁殖率オオカミが各ステップごとに繁殖する確率(0だと繁殖しない)
    牧草要素ヒツジの食物となる牧草の要素をモデルに含めるか
    OFFだとヒツジは1ステップごとに体力を回復する
    ON だと牧草が成長するまでヒツジは食べられない
    牧草成長ステップ牧草が成長するまで要するステップ数

    使用方法

    • 牧草要素を設定するか、モデルを牧草に含めるならONに、オオカミとヒツジだけにするならOFFにする。
    • スライダーで変数を調整する。参考値は下欄を参照。
    • スタートボタンでシミュレーション開始。
    • 頭数グラフを見ると、時間の経過による頭数の変化が分かる。

    エージェントルール

    • オオカミもヒツジも1ステップごとに体力を1単位消費する。
    • ヒツジは自分の位置の牧草が育っていれば食べる。ヒツジは牧草を食べると5単位体力を回復。ただし、100単位以上体力は増えない(満腹の場合でも食べるが体力にならない)。
    • オオカミは自分の位置にヒツジがいると1頭食べる。オオカミはヒツジを食べると30単位体力を回復。ただし、300単位以上体力は増えない(満腹の場合でも食べるが体力にならない)。
    • 牧草要素がONの場合、ステップごとに牧草は育ち、成長ステップ数になると食べられる。

    着目点

    • 牧草がない場合のヒツジとオオカミの数の変動をみる。それぞれの数の増減が関連していることに注意。どのような関連性があるのか?
      (参考値:ヒツジの数:50 オオカミの数:25 ヒツジの繁殖率:5 オオカミの繁殖率:4 牧草要素:OFF)
    • 牧草が加えられた場合、3者の数は今度はどのように関わっているか?また、その関連をどのように説明するか。
      (参考値: ヒツジの数:50 オオカミの数:25 ヒツジの繁殖率:8 オオカミの繁殖率:2 牧草要素:ON 牧草成長ステップ:20)
    • 安定的なモデルと、そうでないモデルがあるのは何故か。

    試してみる

    • 様々な変数を設定してみる。モデルの安定性と変数の関係を調べる。
    • オオカミとヒツジだけのモデルを安定させる変数を見つける。
    • 牧草要素をONにして、オオカミの数を0に設定する。こうすると、ヒツジと牧草だけの生態系は安定する。ヒツジとオオカミだけの生態系は安定しないのに、何故この場合は安定するのか?
    • 安定的な状態では、数の変動が予測できる。では、この変動を早めたり、遅くしたりする変数を見つけられるか?

    発展課題

    • 数値出力を加えると、ヒツジやオオカミの頭数や牧草の量を直接モニター可能である。
    • エージェントの生死を決めているのは体力のみである。他の要因(たとえば寿命)を加えるとどうなるか?
    • マップの広さは結果に関係するか?
    • ディフォルトではヒツジとオオカミの代謝率はそれぞれ一定である。これを変えたり、個体別に乱数で割り振ったりする(虚弱体質のヒツジや屈強のオオカミなど)とどうなるか。

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