多少技術寄りの話になるが、サーバ内でのファイル配置もまた立ち上げ時からしっかり検討しておくべき課題である。HTML解説本の多くは各ページの記述には詳しくても、サーバの構造にまできちんと言及しているものは少ないのだ。このセクションは、技術的なレクチャーを目的としたものではないのだが、補足程度に簡単に触れておくことにする。
まず、サーバにはかならずトップディレクトリというものが存在する。これは普通、学校ホームページのURLを指定すると、一番最初に読み込まれるファイルが存在する階層だ。なにもコンテントを収納していない状態ではまっさらになっているはずだ。ここに必要に応じて、さらにサブディレクトリを作り、分類しながらコンテントを作ってゆくことになる。ディレクトリはニュースやリソースアーカイヴ、あるいは生徒会活動といった具合にトピック別に作ってゆくが、将来的な拡張も考えて配置しておいた方がよい。最初は1トピックで十分でも、後々になって分割が必要になるケースもあり得るからだ。また、メインテナンスの都合を考えると、ひとつのディレクトリに配置するファイルやサブディレクトリの数は多過ぎない方がよいが、かといって、階層を深くしすぎるとURLの記述が長くなり、ページを開いてもらえるチャンスが減ってしまうことになる。ユーザーの側からすると、トップメニューから各ページまでの階層はせいぜい3〜4階層程度にしたいところだ。
それぞれのディレクトリには、かならず目次にあたるページが存在する。サーバの設定にもよるが、ほとんどがindex.htmlかdefault.htmlという名称になっているはずだ。このファイルはURLとしてそのディレクトリが指定された時(例えば /eduwoods/)にサーバが自動的に読み込まれるものである。したがって、必ずこのページをメニューとして残りへ分岐するような仕組みを考えておくとよい。
制作が進行してページが出来上がってきたら、次のような点をチェックしておこう。いずれもちょっとしたことだが、ページの完成度を高めるうえではかかせない条件だ。
プランニングの時点で、すでにターゲットとする層は絞り込めているはずだが、対象者に見合った設計やアピールがなされているか、もう一度確認しておきたい。自分たちの年齢層とは異なるターゲットを狙う場合は、言い回しや内容の難易度、文字の大きさ、場合によっては漢字の利用頻度、ルビなどに配慮が必要である。また、組織外の人間を対象とする場合は「分かっているつもりで書いたけれど、説明が足りない」という現象が生じる。こういう部分も要チェックである。
また、組織外という点で別の側面を述べておくと、特に学校の場合は子供達の個人データの公開には十分な検討が必要である。氏名と電子メールアドレスが載っているぐらいは普通だが、住所や電話番号など現実世界の情報を併記するのは、防犯上の理由からも絶対に避けたい。不特定多数が見る可能性があるということは、どんな利用のされ方をするか分からないからである。原則としてネットワーク上のことはネットワーク上で行う。プライベートなデータをやり取りするのは、相手の素性が十分明らかになってからにするべきだ。
これらも内容面についての項目である。ホームページを立ち上げたばかりの頃は、ページの構造だけ作って中身は空っぽ、という状態になりやすいが、ユーザー側にしてみると空くじを引かされたみたいで、腹立たしいことこのうえない。工事中で中身がない場合は、なるべくリンクの手前に「工事中」表示をして、無駄なアクセスを省くぐらいの気配りは必要だ。
たいがい企業のホームページのフッタ部分にはクレジット表示があるが、これは企業に限らずどのサイトでも必要である。クレジットにはたいがい版権表示、制作者の所属と電子メールの連絡先、更新期日が記入されているものだが、各ページにこの表示がないと「誰が作ったのか」が分からず、制作者とも連絡がとりにくいケースが出てくるからだ。例えば、他のサイトからいきなり階層の奥にあるページへジャンプしてきた場合は、どこからどこまでがどのサイトに属しているか、分かりにくくなってしまう。こんな時のいらぬ誤解を避けるためにはクレジット表示が有効なのだ。
コピーの容易なディジタル素材を扱うがゆえに、こと著作権や肖像権に関しては慎重に当たりたい。最近は素材をCD-ROMなどで販売しているケースも増えたが、著作権表示に関する取り決めは様々である。最近は著作権(コピーライト)に対応して、使用料は取らない代わりに原作者の表示はするように求めるコピーレフトという動きもある(自分の作品をもっと広めてもらおう、とするには合理的なやり方だ)。肖像権は、子供達の活動の様子を写真などで紹介する場合に、問題が生じる可能性がある。いずれも公開する前の対応が重要だ。
ページはできるだけシンプルに、読み込みがすばやくできるように配慮することが原則だ。ところが、最近はやたらと読み込みに時間のかかるページが増えてきている。原因は、画像が必要以上に大きかったり、ショックウェーブなどのプラグインを貼り込んだおかげで、ページあたりの容量が大きくなりすぎているせいだ。ホームページの制作環境は、たいがい構内LANでつながっているマシンを利用したり、自分のマシンにコンテントを置いて直接ブラウザに読み込ませる形で行うのだが、これが思わぬ落とし穴で、容量が大きくなってもなかなか気が付きにくいのである。コンテントをサーバから読み出す時のスピードは、端末がモデムを利用しているか、専用線を使っているかでも違うし、途中回線の帯域の太さと混雑具合にずいぶんと左右される。手元でサクサク動いても、どこかのユーザーは表示に5分以上かかると頭に来ているかもしれない。制作サイドのいろいろ凝りたい気持ちも分からないではないが、1ページになんでも詰め込みすぎると、見る側にとってはろくなことがないのである。
さらに、遅めのモデムを使ってインターネットアクセスしているユーザーに配慮することも必要だ。2400bpsや14400bpsクラスのモデムを利用しているユーザーは、ほとんど文字情報を読むだけでも精いっぱいであり、ブラウザのイメージ表示をオフにしている場合が多い。こんな時にメニューを全部画像イメージで作ってあったりすると、先に進みようがなくなってしまうのだ。良く出来たサイトは、イメージがオフになっていても、代わりの文字が表示されるようになっていたり、イメージメニュー以外に文字のメニューが必ず用意されているものである。ここらへんのちょっとした心遣いも大切だ。
いずれもHTMLやJavaScriptといったレベルの問題である。エラーをつぶしておくのは基本中の基本なのだが、たくさんページを作るとどうしてもチェックに穴が出てくる。できれば公開前に複数のスタッフにチェックをお願いするぐらいの慎重さが必要だ。3つめのジャンプボタンはなぜ必要か、というと、クレジット表示のところでも述べたように、他のサイトからいきなり奥の階層にジャンプしてきた時に、バックしかできなくなる「袋小路」状態になってしまうからだ。慣れたユーザーならばURLの階層をみて、自分で上位階層のページを見つけることもできるが、素人だともうどうしようもない。だから、最低でもトップへ戻るボタンぐらいは用意しておくのだ。
学校ホームページの歴史はまだまだ浅く、やっと数が出そろってきたかな?という状態である。ページを持つ学校数はこれからもしばらくは増加傾向が続くだろう。このセクションの最初でも触れたが、学校ホームページは、企業などのホームページと違ってほとんどが手づくりにならざるを得ないので、どうしても面白い学校とそうでない学校との差が大きくなってしまう。この格差は今後も是正されることなく、もっと極端になってゆくだろうと思われる。流行りに乗ってホームページを作ってはみたものの、そこに積極的な意義が見いだせなかったり、校内に安定した編集体制が作れなかった学校は、更新が滞り、やがては淘汰されてゆく運命にあるのだ。
現状では、ページ構成・編集・運営に至るノウハウを扱ったベストな参考書が存在しないので、各学校が手探りで自らふさわしいと思われるスタイルを模索してゆかねばならない。日本中の学校を巡ってみると、すでに編集運営の円滑なサイクルを構築し、続々と内容が集まってきている所もちらほら見受けられるようになってきた。今後は、これらの先進的学校がどれだけ頑張りつつユニークな成果を残し、ノウハウを広められるかによって、将来の学校ホームページの方向性と価値が決まる、と言ってもよいだろう。