学校ページには、誰がアクセスし、何が求められるか、という部分を考えてみたい。そもそも学校は、外部に積極的に情報を発信する仕組みを持っていないので、外部向けに用意する広報資料といえば、学校要覧程度しかないのが当たり前だ。ところがWWWの場合は、こちらから積極的に情報をアピールしなければならないし、ページを読みに来るのは教育関係者ばかりではないので、学校要覧をベースにページを作っていっても、ベストなものが出来上がる保障はない。そこで、最初の作業は、一度頭の中をまっさらにして「新しい環境に見合った学校からの情報発信」を組み立て直すことから始めよう。次に挙げる観点をもとに、頭の中で学校ホームページのシミュレーションを組み立ててみるのである。
観点とは?
来訪者にはどんなタイプがあるだろうか。どんな人々に見にきて欲しいだろう?その属性や年齢、地域などを割り出してみる。
インターネットの場合、実際の学校来訪者と根本的に異なるのは「特に用事がなくても、関係のない人でも訪れるチャンスがある」ということだ。キッズページに寄せられる電子メールの傾向から言うと、当初想定していた「子供達・先生・教育関係者」に加えて、30〜40代の一般社会人が結構多いことが分かってきた。つまり、小学生中学生を子供に持つ保護者の方々からも会社や家庭からアクセスを受けるということである。
ちなみに、海外からのメールは国内に比べて女性の比率が高く、学区のコンピュータコーディネイタや担任の先生、あるいは子供と一緒にネットサーフィンを楽しむお母さんからも交流申し込みが来たりする。ここらへんは日本より一歩進んでいる国らしい「あたりまえのように使うインターネット」の雰囲気が良く出ている、と言えるだろう。
来訪者がウェブサイトにアクセスする理由やニーズはどんなものが考えられるだろうか?。先に割り出した来訪者像それぞれについて書き出してみる。
授業研究の課題を中心に考えると「教材や教育情報を提供する」ことが第1に浮かぶが、いろいろな要素を書き出してみると、これはごく一部に過ぎないことが分かる。ウェブページは万人に開かれたものだから、これまで学校がサポートできなかった部分のニーズをあらためて掘り起こす事にもなる。特に保護者や卒業生・地域との窓口としての潜在力は見逃せないものがあるだろう。
ページに出してみたいもののイメージを書き出してみる。この時点では具体的でなくても構わない。また、学校の中にある手持ちの情報リソースをざっと整理してみよう。子供達の作品や学校要覧、研究紀要、…。
このなかで、すでにテキストやデータ化されておりウェブページに置き換えるだけでいいもの、素材はそろっているが電子化の必要があるもの、ゼロから組み立てなくてはならないものを区別する。プレーンなテキストになっていればホームページに置き換えるのは簡単だから、紀要原稿や指導案などがワープロデータとして残っていれば、これが一番手間がかからない。また、日頃子供達が描いたCG作品などのストックも十分に活用可能だ。
掘り起こしたニーズをもとに、あらためて学校ホームページの意義というものを考えてみよう。学校から情報発信される意義と内容には、主に次の4点が挙げられるだろう。これらの要素からどの程度をそれぞれ調合するかによって、学校のなかでのホームページの位置づけが決まってゆくのである。
ここは従来から学校要覧として用意されてきたものがベースとなる。最低限の条件として、ページにアクセスして大体の学校情報がつかめるとともに、学校側とすみやかに連絡が取れるような条件を満たさなくてはならない。また、来訪者の幅広さを配慮にいれるならば、さらに保護者や子供達を意識した情報提供のあり方を模索する必要がありそうだ。
他の部分と合わせてトータルに「学校をどう見せたいのか」「どのような印象を持たせたいのか」を検討する必要があり、それによって内容の硬軟、掲載情報のプライオリティ、制作主体をどこに置くか(学校側・児童生徒・保護者など)が決まってくる。
アーカイヴとは、世界に開かれた公共の電子図書館を意味して名付けたものである。学校での実践活動、創造的活動、ネットワークを介して行われたコラボレーションの成果など、学校に残されたディジタルのリソースを再編集し、ページ上で公開する。これらの情報提供は、教師の実践記録を掲載することはもちろんだが、むしろ、完成度に多少の問題はあっても、子供達の活動成果を前面に押し出すところに学校ページとしての本質的意義があると言えよう。
学校は、日常的に子供達から数多くのモノが生み出され続ける場所なのだが、これらは一度子供達が家に持ちかえってしまうと学校には形が残らないためか、これまではあまり重要視されてこなかった。ディジタルの素材はコピーが簡単にとれるので、子供もオリジナルを家に持って帰れるし、学校にもデータを残しておける、という利点がある。学校に残されたデータは、単に蓄積して取っておくのではなく、ネットワーク上の共有資産として、広く利用してもらうことを前提とするのである。将来的にこの積み重ねは学校にとって貴重な財産となってゆくだろう。
学校ホームページは活動の成果を発表するとともに、それをきっかけとした新たなコラボレーションのための呼びかけや、コラボレーション活動自体の媒体に用いることができる。共同学習・調査や学校間交流などのプロジェクトは、あらかじめ教師の側でセッティングしたうえで、子供達に参加させる場合が多いが、子供達に企画運営をまかせ、ホームページ制作も子供達自身が前面に出て行うことで、かえって同世代との意見交換がスムーズにできているケースも少なくない。
ホームページは、基本的に制作者の作ったページ情報を一方的に送り出す仕掛けしか持っていないが、サーバに工夫をすることで擬似的な電子会議室を構成することもできる。この場合、ページ上にオープンなスペースができるので、来訪者からの意見を求めやすくなる。
学校ホームページはまた、教師・児童生徒・保護者・卒業生を含んだ学校コミュニティへの窓口の役割を果たす。これは、学校が地域に向かって開かれる、いわゆる「学びの共同体」を組織するうえでも重要である。普通、学校には制度的にも組織的にもこのような受け付け窓口が用意されていないことが多いからだ。かつて学校に関係のあった人が懐かしく訪れたり、母校の活動になんらかの貢献をしたいという人に接触のチャンスを作ったり、あるいは、地域のボランティアをかってでたいと思っている人々を、ともに教育を考えるメンバーとして上手に取り込んでゆくためにも、これらのページは欠かせないだろう。