Bloomのタキソノミー改訂版

書きかけをひとまず置いておく。これは論考になっていないので単なるメモ。

Bloomのタキソノミー(教育目標の分類学)は教育方法論で扱う基本事項なのだが、近年は弟子筋が2001年に開発した改訂版タキソノミーが、アクティブ・ラーニング関連でよく紹介されるようになった。旧版と比較すると改訂版の方が理解がしやすく、授業にも馴染みやすいのだが、中身を十分知らずに使うのはちょっと怖いなと思った次第。

今求められる学力と学びとは」を著した京都大学の石井英真氏が2002.2003.2004と改訂版タキソノミーに関する論考を書いているので、ポイントをまとめておこう。

タキソノミーとは

B.S.Bloomらが開発した「教育目標の分類学」は教育目標の行動的局面を分類し明確に叙述するための枠組み。タキソノミーには「認知領域 :cognitive domain」「情意領域 : affective domain」「精神運動領域 :psychomotor domain」の3領域があり、各領域が主要カテゴリで構成されている。タキソノミーは、原則として単純なものから複雑なものへの順序で配列され、累積的・階層的構造(低次カテゴリは高次カテゴリの必要条件になる)として捉えられる。カテゴリごとに教育目標例と対応するテスト項目例が記述されている。

改訂版タキソノミー

改訂版タキソノミーはL.W.AndersonとD.R.Krathwohlらによって2001年明らかにされた。旧版の認知領域の再構築である。その背景としては、旧版開発以降の研究・実践の展開、特に心理学の行動主義から認知主義への転換、米国連邦政府や州レベルの標準テスト浸透に伴う規準と評価法開発への要請、高次の学習効果を重視する動き等がある。

旧版は大学試験官向けのテスト項目分類が目的で開発されたが、改訂版は初中等教育段階の現場教員が活用主体で、評価以外にも教授法選択や組織における有効性にも言及しており、広い実践の文脈で活用される使いやすい枠組みが志向されている。

認知心理学の知見を取り入れ「行動 :behavior」を「認知過程 :cognitive process」と言い換えていることで内面的な心的過程を重視している。

タキソノミーテーブルの定義

 

 

 

タキソノミーテーブルの定義については、O.L.Wilson(2016)が解説を書いているので、これを簡単に翻訳してみた。

認知過程次元(横軸)

  1. 記憶:
    記憶から知識を認識または想起する。記憶とは、定義・事実・リストの作成・検索や過去の学習情報の暗唱のために記憶が用いられる事を示す。
  2. 理解:
    記述・図示・解釈・例示・分類・要約・推論・比較・説明など異なった型の機能を通じて意味を構築すること
  3. 応用:
    実行・実装によって手続きを実行・使用する。適用は学習材がモデル・プレゼンテーション・インタビュー・シミュレーションなどのプロダクトを通じて学習された素材が利用される状況と関連する。
  4. 分析:
    素材やコンセプトをパーツに分解し、パーツの相互関係や関連付けの方法、全体的構造や目的との関連性を判断する。この機能に含まれる精神活動は、差別化・組織化・属性付与であり、構成要素や部品の区別を可能にする。分析を行う際には、スプレッドシート、調査、図表、グラフィックを作成することで、この心的なはたらきを表すことが出来る。
  5. 評価:
    基準や標準に基づいてチェックと批評を行い判断を下すこと。批評・推奨・レポートは、この評価プロセスを用いて生成される成果の一部である。改訂版タキソノミーでは創造のまえに評価が位置付けられているが、これは、何かを創造する以前にしばしば必要とされる前処理行為とみなされるからである。
  6. 創造:
    要素をまとめると一貫した機能的全体が形成される。企画、制作を通じて要素を新しいパターンや構造に再編成する。
    創造はユーザーが部品を新しい方法で組み立てるか、あるいは、部品を合成して新しくて異なった形に合成して新たな形や製品を生成する。このプロセスは、新しいタキソノミーの最上位に位置付けられる。

知識次元(縦軸)

  1. 事実的知識
    特定分野の基礎的知識。 この次元は学問分野を理解したり問題を解決したりするために、学生が知っておくべき本質的な事実、用語、詳細または要素を指す。
  2. 概念的知識
    特定の分野に関連する分類、原則、一般化、理論、モデル、構造の知識を指す。
  3. 手続的知識
    学生が分野、科目、または専攻分野に固有の何かをするのに役立つ情報または知識を指す。それは探究方法、きわめて稀少な技能、アルゴリズム、技術、および特定の方法論を含む。
  4. メタ認知的知識
    自身認知と特定認知プロセスの気付き。状況的条件的知識とや自己知識を加え、問題や認知課題を解く方法についての戦略的またはリフレクティブな知識。

タキソノミー適用の例

改訂版タキソノミーの教育目標明確化については、先の石井氏がマクベスの読み解きを例に知識次元を挙げているので、これに認知過程次元を加えてみた。

  • 事実的知識×記憶・理解
    マクベスの登場人物名や台詞を覚える
  • 概念的知識×理解・分析
    「野心」「悲劇のヒーロー」「アイロニー」といった概念のイメージを膨らませて活き活きとした作品鑑賞を実現する
  • 手続的知識×応用
    「まずは話の筋を取って次に登場人物の関係をおさえて…」といった作品一般の読みの技術を習得させる
  • メタ認知的知識×分析・評価
    読み技術を教えるだけでなく、その読みの技術を応用しているプロセスを常に自分自身でモニターし、うまく応用出来ず間違えたときは原因を自分で考える

このように、タキソノミー・テーブルを使えば授業の教育目標を簡単に二次元で表わすことができる。カリキュラム企画や活動単元のとりまとめでは威力を発揮するだろう。

(タキソノミーの意義と限界等はまたのちほど)

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