教育情報化とマルチステークホルダ
「教育情報化は、国・自治体・教育関係者・保護者・学習者・研究者・企業団体等マルチステークホルダ(広範な利害関係者)で検討されるべきテーマである」と書くと当たり前にみえるが、これまでの議論の進め方は必ずしもそうではなかった。我が国での議論の閉鎖性や硬直性が与えた影響は少なくなく、これが教育情報化停滞の一因になったと考えている。
さて、来る3/9~10開催の「教育の情報化推進フォーラム」(主催:一般社団法人日本教育情報化振興会(JAPET&CEC))では、教育ICT課題対策部会の名称でグループディスカッションがエントリーされている。
【B1】14:30~15:30グループディスカッション
「これでいいのか?学校での学習者用コンピュータの利用」
タイトルでお分かりのように、1/27に開催したラウンドテーブルと同じ「これでいいのか?」シリーズのひとつ。1/27は主に保護者目線からの教育情報化検討であったが、3/9は主に教員・教育委員会関係者がメイン。昨年度も同様のディスカッションを開催したので、参加は二度目という方も多いかと思う。テーブルごとのディスカッションテーマとしては次のようなものが提案されている。
- 保護者・社会一般への認知拡大をいかに図るか
- 学習者用コンピュータをどのように活用すべきか
- 実社会と学校との情報化格差をどう捉えるか
- どうなる?どうする?高校の学習者用コンピュータの整備
- 思考力・判断力・表現力を育むPC活用とは何か?
- 1人1台の学習者用PCは授業でどう使うのか?(中高)
私は主催の部会にオブザーバー参加している立場なのでプログラムには名前をエントリーしていないのだが(総括はすることになっている)、シリーズ仕掛け人の一人として9日議論のポイントについて簡単にまとめておきたい。具体的には次の4点だ。
- 日本の教育情報化は国際的に見ても著しく遅れている
PISA2015のICT活用調査から、日本は整備・活用・意識のいずれの面においても国際的には底辺レベルである。 - 学校側には情報化に対する強い動機づけがない
一般的な学校で情報化メリットを主張する人は必ずしも多数派ではない。 - 教育情報化に関わる者は全員イノセントではない
利害関係者は教育情報化の推進を意図しながら、実は阻害因も作っているという意識が必要。一方的被害者と言ってよいのは保護者・児童生徒だけ。 - 活用・運用・管理の方法にベストウェイはない
先進校事例も表彰事例もあくまで進行中ケースのひとつで、結果が保証されているわけではない。
「教育の情報化推進フォーラム」イベントで数々の表彰や事例発表が行われる事を見越して、あえてこういう形で釘を刺すのはなんとも底意地が悪いのだが、こうしたイベントの持つ暗黙の承認権威の前提を崩しておかないと、真の課題や解決の糸口は容易には見えてこないものだ。当日は、余裕をもったディスカッションには時間がまったく不十分なのだが、なかなか貴重な機会でもあり、ぜひ闊達に意見を交わしていただけたらと考えている。