教育情報化に関する保護者意識 #1-1
注)本稿は2019年6月に実施した保護者対象アンケートの論考(JSET19-5)をブログ記事に起こしたもの。予稿本体はこちらからどうぞ。
はじめに
情報社会の進展に伴い,家庭での児童生徒の情報機器利用も年々増加傾向にあり,平成30年度内閣府調査(2019)では,高校以上のスマートフォンによるインターネット利用率は97.5%に達している.しかし,我が国の小中高等学校では2009年の通知以来,携帯電話の学校持ち込みや校内での利用は原則禁止とされ,ネットいじめの防止や情報モラル教育の取り組みもあって,学校で児童生徒が日常的に所有情報機器を操作・活用することは意図的に避けられてきたと言える.2019年2月19日の柴山文部科学大臣会見では(文部科学省, 2019a),学校への携帯電話・スマートフォンの学校持ち込み規制指針見直しの方針が明らかにされ,携帯電話持ち込み規制見直しに関する議論が再び活発化することとなった.
このことは,児童生徒の日常的情報環境に大きな影響を与えると予想されるがゆえに,単に学校教育における生活指導上の課題にとどまらず,学習者1人1台の情報端末整備にはじまる学習情報環境の刷新と,学びの個別最適化,基盤となる資質・能力の育成,利用抑制的情報モラル教育からデジタルシティズンシップ教育への転換など,幅広い領域と俯瞰的視野をもって検討すべきであることは言うまでもない.
そこで,本調査研究では,児童生徒の保護者が,携帯電話持ち込み規制見直しに際して,教育情報化の実態をどのように捉え,どのような期待や懸念を持っているか明らかにすべく,未就学児から高校3年生の保護者を対象とした意識調査を実施した.
調査概要
本調査は2019年6月オンライン調査会社を通じて実施し,6歳未就学児~高校3年生(13学年区分)の保護者を対象に,回答者男女の均等割り付けを行い,合計3104名から有効回答を得た.調査項目は全部で15問.
子どもの情報機器利用・所有状況
お子さまがもっぱら利用・所有する情報機器は、どれですか。
それぞれ利用状況について、1つお答えください。
子どもが利用・所有する情報機器についての項目群では,それぞれの情報機器について,「子どもがもっぱら使う」「家族で共有」「家にはあるが使わせない」「家にはない」「分からない」で回答を求めた.
「子どもがもっぱら使う」割合が高い順は,図1に示すとおり「携帯ゲーム機」47.4%,「スマートフォン(電話番号付き)」36.9%であるのに対し,「家族で共有」割合が高い順では,「コンピュータ」45.8%,「タブレット」26.5%であった.
子どもの所有と学年に注目すると,「スマートフォン(電話番号付き)」はおおむね未就学児~小6までは15%以下,中学生は50%前後,高校生は90%前後と三段階で推移することが分かる(図2).
「スマートフォン以外の携帯電話(キッズケータイ等 図3)」や「携帯ゲーム機(図4)」は小5に所有ピークがある.
「番号なしのスマートフォン・音楽プレーヤー(iPod Touch等 図5)」のように、スマートフォン以外の端末を用いることでインターネットアクセスするための、代替手段として活用がうかがわれる。
学年差なく15%で安定する「タブレット(図 6)」など,情報機器の種類によって所有傾向には異なる特徴がある.また,「コンピュータ(図7)」や「タブレット(図 6)」は,子ども所有よりも家族共有の割合が一貫して高い.これらはPISA国際調査の他国との大きな傾向差といえる。
まとめ
子どもの情報機器利用・所有状況に関して特徴をまとめると次の5点、すなわち、
- スマホの子供所有は学年別に見ると3段階で推移する(小学生15%以下、中学生50%、高校生90%)
- 携帯ゲームやキッズ携帯は小5に所有のピークがある
- 番号なしスマホや音楽プレーヤーは中2以降のネットアクセス代替手段
- コンピュータは家族と共有するのが普通
- タブレットはコンピュータより子ども所有率が高い
【追記】タブレットの所有率には、教育支援産業が提供する機材(進研ゼミやスマイルゼミなど)が含まれてるんじゃないのか、という指摘をいただきました。数の読取りとしては注意を要するところです。(2019/12/18)