【講演】8/2 OLPCが世界の教育を変えた
【講演】
OLPC(こども1人1台PC)が世界の教育を変えた
構築主義とこどもの創造性育成
10年ほど前に日本でも話題となった「100ドルパソコン」を覚えているでしょうか。これは、貧しい国の子供たちに安価なパソコンを配って、デジタル・デバイドを解消するためのものと一般には理解されていました。しかし、このプロジェクトを推進していた団体OLPC(One Laptop Per Child)は、教育や学校の改革を目指し、高い理想を掲げて活動していました。創始者のひとりであるMITメディアラボ初代所長のニコラス・ネグロポンテ氏は、「これはノートパソコンのプロジェクトではない。教育のプロジェクトだ」と断言しています。途上国を中心にはじまったOLPCは先進国の1:1(1人1台)PCムーブメントにも大きな影響を与え、その動きは世界的なものへとなりつつあります。
OLPCは、教師が子どもたちを一方的に教えるのではなく、子ども自身が、ものづくりを通して、様々な概念を構築するという構築主義(constructionism)を背景思想としています。
OLPCには、子どもの所有、低年齢対象、社会への浸透、常時接続、フリーかつオープンソースからなる5つの基本原則があり、この考え方は現代にも通用します。そのハードウェアである「XO」は、学習の場面から形状や機能が決められ、ソフトウェア環境の「Sugar」も、協働作業と学習履歴を中心に、すべてのアクティビティ(アプリのこと)が設計されていました。
保存ボタンがなく、自動的に履歴として保存されることや、ひとつのドキュメントをネットを介して複数人で同時作業できることなど、今では当たり前の機能が既に実装されていたのです(当時は誰にもその意味が分かりませんでした)。
このたび、MITメディアラボの2代目所長にして、OLPCの共同設立者であり、その意志を受け継ぐSugerLabsを率いるウォルター・ベンダー氏をお招きし、お話を伺う機会が叶いました。また、現在研究されている教育用音楽プログラミングソフトである「Music Blocks」について、共同開発者であるデビン・ウリバリ氏からご紹介いただきます。
デジタル教科書やプログラミング教育が注目されている昨今だからこそ、その原点ともいうべき、OLPCと構築主義に触れることは意義のあることだと思います。大変貴重な機会ですので、ぜひ奮ってご参加ください。
開催概要
- 日時: 2018年8月2日(木) 10:30 – 12:30【終了】
- 場所:国際大学GLOCOM(六本木駅徒歩8分) http://www.glocom.ac.jp/access
- 費用:参加無料
- 逐次通訳があります(デビンさんは日本語で発表されます)
- 録画はこちらからご覧になれます。
- ウォルターさんのスライド資料はこちら
- デビンさんのスライド資料はこちら
スケジュール
- 10:30-11:10 OLPCと構築主義について (ウォルター・ベンダー)
- 11:20-11:50 Music Blockについて (デビン・ウリバリ)
- 12:00-12:30 ディスカッション
※すべて予定であり変更の可能性があることをご承知おきください
講師紹介
- ウォルター・ベンダー Walter Bender
OLPC共同設立者。子どものための学習ソフト製品の非営利プロジェクト「シュガー・ラボ(https://sugarlabs.org/)」の設立者兼エグゼクティブ・ディレクター。第2代MITメディアラボ所長(2000-2006)。http://web.media.mit.edu/~walter/
- デビン・ウリバリ Devin Ulibarri
ニューイングランド音楽院ギター科長。クラシックギタリスト、教育者、研究者、コンサルタント。
http://www.devinulibarri.com/
共催
- Facebookグループ「ICT教具論からの脱却」
教員主導型のICT活用授業の限界を打破し、学習者中心型の1:1(1人1台)情報端末の活用を模索するための研究グループ。学校の情報環境整備・予算措置からカリキュラム構成・授業技法や学習者意識の調査まで幅広い話題を扱う。 - 「未来の教室」実証事業 Music Blocks(steAm株式会社/株式会社学研プラス)
- 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
参考文献
- ラーニング・レボリューション――MIT発 世界を変える「100ドルPC」プロジェクト ウォルター・ベンダー他, 英治出版, 2014/5
- 100ドルノートPC「XO」徹底解剖~OLPCが持つ教育理念が結実した設計の魅力~, 阿部 和広, Software Design 2008年3月号, 技術評論社, 2008/3