教育の理想はディストピア?

Inside one of the prison buildings at Presidio Modelo, Isla de la Juventud, Cuba by Friman パノプティコン(全展望監視システム)型刑務所

生徒全員に装着型端末 広島叡智学園「健康を管理」

来年4月に広島県大崎上島町で開校する全寮制の中高一貫校「県立広島叡智(えいち)学園」は、生徒全員にウエアラブル端末を身に着けてもらう。心拍数や血圧、歩数などのデータを測り、寮で暮らす生徒の健康管理に生かす狙い。食事の回数なども把握できるようにして、保護者が安心して子どもを預けられる環境を整える。

県立広島叡智学園 主体性持つ人材育成を 来春開校、林校長が抱負

来年4月に大崎上島町に開校する全寮制の併設型中高一貫校「県立広島叡智学園」の初代校長となった林史氏(46)が4日、県庁で就任会見を開き、「学園への情熱は誰よりも強い。世界で一番生徒が輝くプロジェクトになるようまい進していきたい」と抱負を語った。

テクノロジーは欲望を加速させる。こういう拘束具チックな発想を教育の理想と考える人々もいるのだろう。

これがICT活用例か!未成年だと思って全員装着で個人データ強制取得か。そこまで分析しないというのだろうが、性生活もわかるだろう。その可能性を教えるのがITリテラシー教育だ。センシティブデータをインフォームドコンセントで取得することを実践で示すべきではないか?

鈴木正朝@suzukimasatomo

https://twitter.com/suzukimasatomo/status/990944954615709696

教育業界はこうしたセンシティブなデータの扱いについて、ひどく無邪気というかイノセントを装いたがる。テクノロジー自体は無色でも、やってることは教育の名を借りた暴力そのものである

例えば「在園・在校時の子どもの様子が知りたい」は親の希望だけど、ニーズにかこつけて、保護者公開用の監視カメラシステムを売り込む企業がある。これも欲望を変な方向に加速させた事例のひとつ。実際にはどうかというと、設置場所1箇所に子どもが滞在する時間は短時間だし、ずっと見ていても子どもは豆粒くらいにしか捉えられない。監視は出来ても、肝心の様子は分からないという事に気付く。テクノロジーの愚かな使い方である。

では、子どものGPS履歴・監視カメラ・生活ログ・学習履歴が取れる事の最大のメリットは何かというと、膨大なデータから有益な情報を抽出する事ではなくて、むしろ、積極的管理下に置く事を子どもに自覚させる手段として最強だから。理屈はパノプティコンと同じ(もちろん皮肉である)。

かつてのCAIブームの時も、学習者の履歴が取れることが最大の売りだったけど、データ活用してソリューションに結び付いた例を見る事はなかった。つまり「理屈上は出来る」というだけで、当時は解析用の強力なツールがなかった。もちろん今は機械学習があるから、膨大なデータから有益な知見を得る事には意味がないとは言わない。それでもなお、こうした個人の履歴は直接本人にフィードバックすればすむ事なのに、企業や学校が横取りして、上から【管理・指導】しようとする発想には決定的に教育的なセンスが欠けていると言わざるを得ない。

保護者ニーズがあるから、とか、便利だから、とか、企業のセールストークに乗せられて導入を決める教育機関は、そういうところに本質的な教育姿勢が透けて見えてしまう。子どもの主体性や自律性を育てたいのか、それとも、子どもに対する不信の裏返しとして監視と管理・服従を求めるのか。

件の県立校は離島の全寮制で、校長曰く「生徒の主体性を育てる」のだそうだ。ゴフマンのいう全制的施設のような場所に隔離しておいて、どうして主体性が育つのか、納得のいく説明を求めたいところだ。

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