B君の先進国型ICTモデル

B君のストーリーのベースになっているのが先進国型学校ICT活用モデルです。フィンランド・デンマーク・スウェーデンあたりを想定しています。

1. 情報環境

【1.1提示装置】電子黒板・プロジェクタは全教室固定常設で、一部教室では黒板はなく電子黒板のみになっています。

【1.2学習者端末】学習者端末としては児童生徒の個人機材の持ち込み(BYOD[1])を奨励し、持ち込みしない子には学校が機材を貸与します(タブレットはもっぱら小学校低学年向けで、それ以上はキーボード付きのクラムシェル型ノートPCが一般的です)。まとまった台数が設置されたPC室のほか、オープンスペースにも作業用PCを展開しています。

【1.3Wi-Fi】Wi-Fi APは校内全域に固定設置され、1人2台以上で使っても接続に支障は生じません。

【1.4サイネージ】昇降口や食堂にはスケジュールや告知のためのデジタルサイネージが設置されています。

【1.5個別IDとサービス】教員・児童生徒には個別のアドレスが付与され、クラウドによる校内SNS・LMS[2]・基盤サービスには、校内校外から自由にアクセスすることが出来ます。

2. 運用仕様

【2.1機器運用】基本的に提示装置の電源は日中常時ONで、ほとんどの授業で活用されます。

【2.2データ共有】データはLMSや教科書会社のウェブ経由で提示します。

【2.3学習者利用】学習者側端末は教科によって使い方が異なりますが、もっぱら学習者中心で講義のノートテイクや個別作業・グループワーク等でキーボード入力を頻繁に利用します。データ共有と課題提出には校内SNS・LMSが用いられ、個人のノートデータはクラウドの個人領域に蓄積します。

【2.4告知・連絡】学校からの告知・連絡は原則校内SNS・LMS・電子メールで行われ、出欠状況や成績の確認も全てウェブ上で確認出来ます。ホームページは1日数回以上更新。配布物のデータはホームページに掲載され、検索出来るようにしてあります。

【2.5機材持込と利用制限】児童生徒は授業用途に応じて持ち込むBYOD機材を使い分け、必要があれば学校機材も柔軟に活用します。機器利用のルールは学校と家庭で責任範囲を明確にしており、学校は個人機材の中身についてガイドラインを示すのみで、具体的な規制や制限を行う事はありません。

3. 展開上生じる課題

3.1 学校がICTの知的生産活動を牽引する

学習者中心型授業では、教員の説明時間が短く、大半が学習者側に任されるので、構成的な課題をこなすためには、自己調整学習の能力が求められます。課題の大半はレポートとして出題されるので、構造的文章の作文能力が必要です。ネットを使った課題では大量の情報を整理吟味するためにメディアリテラシーが磨かれます。

3.2  ICTスキルの底上げが学びを個別化・高度化する

限られた授業時間を有効活用するために、教員主導の一斉授業は学習者中心型に転換されます。基礎的知識の理解習得はICTによる「学習の個別化」(アダプティブラーニング)で達成率が改善され、一方、応用発展活動ではICTで「学習の個性化・協働化・社会化」が強化・高度化されます。

学習や連絡に関わる大半の情報がクラウド化され、マルチデバイスで柔軟にアクセス出来るので、紙の消費は大幅に減ります。

学校生活で日常的にICTを扱うことで、児童生徒のICTスキルが強化され、あわせて保護者の理解促進と家庭へのICT普及を促します。

3.3 社会的コンセンサスが学びのICTを支える

学校での日常的利用を前提とすることで、以前設けられていたアクセス制御も、より現実的な運用仕様に転換せざるを得なくなります、また、児童生徒の持続的かつ生産的・構成的課題への取り組みはICTスキルの底上げと高度な能力の獲得につながります。

すぐ使える機材と学習者中心の授業構成のため、教員の負荷と授業リスクは低く、利用機会はますます拡大します。教員が使わなくても児童生徒が勝手に使う事をもはや阻止できないでしょう。


[1] BYOD :Bring Your Own Deviceの略、個人所有のICT機材を自由に持ち込む事を意味する。学校側が統一機種・仕様を決めて購入させたり、持ち帰らせたりするのはSOID School Owned Internet Deviceと言って区別する。

[2] LMS :Learning Management Systemの略、学習教材の登録・検索・提示、学生に対する課題の割り付け、提出受付、採点返却など、学習に必要な機能をオンラインで提供するシステム。

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