リービッヒの最小律と情報環境の構成条件
学校の情報環境活用は、与えられた最悪の条件水準で定着する。
という悲観的な話をずっと考えていて、先日、生物の先生にリービッヒの最小律の事をあらためて教えてもらった次第。
WikiPediaの解説によると「リービッヒの最小律は、植物の生長速度や収量は、必要とされる栄養素のうち、与えられた量のもっとも少ないものにのみ影響されるとする説。 ドイツの化学者・ユーストゥス・フォン・リービッヒが提唱した。」とある。最小律を説明する際に用いられるのが、上図のドベネックの桶で、桶板の一番低い部分までしか水は貯まらない。
たとえば、このたびの1人1台の学習者端末構成で最小律を決めるのは、次のような事だ。
- 学習者中心主義 VS 教員主導主義
教員主導主義(一斉授業)は、学習者端末を積極的に統制しようと動機付けるので、教員負担は高くなり、学習者の端末接触頻度を低めてしまう。 - 生活指導的観点
児童生徒の自律性を尊重するか、それとも性悪説と不信の観点から厳格管理しようとするか。管理的発想でフィルタリングや端末機能の制限を加えるほど利便性は損なわれ、厳しい罰則や利用制限をするほど、前向きな活用動機づけは働きにくくなる。 - 情報消費 VS 知的生産
知識スキルの理解習得を重視するか、思考力・判断力・表現力等の育成と関連する知的生産を重視するか、によって、インストールするアプリケーションの数や構成が決まる。コンテンツ重視(情報消費)になるほど費用は嵩み、全科目全単元揃えられないという理由で、活用は停滞しやすくなる。 - ICTベーススキルの格差
ICTベーススキルは基礎的なOS操作、キー入力効率を含む。格差が大きい(低位の学習者が多い)と初歩的トラブルに拘泥されることで、活動は停滞しやすくなる。キー入力効率が稼げないと高度な知的生産は行えない。 - クラウドIDの付与
クラウドIDを付与することで、①電子メールアドレス、②G Suiteや Office365などクラウドベース・ツール、③Classroom等の連絡・資料配付・課題提出システム、④クラウド個人データのマルチデバイス同期が可能になる。1人1台端末以外にスマホや家庭PCといった私有機材の活用も視野に入れるならクラウドIDは必須。クラウドIDを付与しなければ、端末にデータが拘束されるので、活動の自由度は大幅に減る。 - 端末条件
CPU・メモリ構成・画面サイズ・重量・キーボードやインカメラ/アウトカメラの有無によって活用シーンは大きく変わる。キーボードがないと知的生産活動には耐えられない。オールインワン(全部入り)にするか、スマホや家庭PC等の使い分けでマルチデバイス運用を視野に入れるか否か、でも端末仕様は変わる。 - ネットワーク条件
通常の学習活動で滞りのない安定した接続と通信帯域が確保出来るか否か。不安定さやネットワークのボトルネックは活用度に大きく影響する。LTEの場合は通信料金が過大になると利用を抑制してしまう。 - 授業支援システムかClassroomアプリか
日本独自の授業支援システムは一斉授業場面を前提に設計され、端末の一括制御・操作抑止をするので、学習者側の端末操作頻度を下げる。一方、世界的に普及しているClassroomアプリは、授業連絡・資料配付・課題提出返却を行うもので、持続的な活用を促進する。 - 文鎮化と破損故障対応
日常的持続的に活用される端末は大切に扱われるが、文鎮化した端末は扱いがぞんざいになるので、破損故障しやすくなる。
とまあ、ひとまずはこんなところだろうか(追記します)