PISA2012/2009と比較してみると
2016/12/6に発表されたOECD PISA2015の【ICT親和性項目】の分析・考察第7弾をお届けする。ICT親和性項目の内訳と本稿の内容は次の通り。
IC001 家庭の情報機器環境(利用するか否か)IC009 学校の情報機器環境(利用するか否か)IC002 初めてデジタルデバイスを使った年齢IC003 初めてコンピュータを使った年齢IC004 初めてネットアクセスした年齢IC005 平日学校でのネット利用時間IC006 平日校外でのネット利用時間IC007 週末校外でのネット利用時間IC008 校外の私的用途ICT利用頻度IC010 校外の学習用途ICT利用頻度←今回はこれIC011 学校でのICT利用頻度←今回はこれIC013~015 ICTに関する意識
各項目の選択肢は(全く・ほとんどない、月に1~2度、週に1~2度、ほぼ毎日、毎日)の5択である。今回は過去2012と2009調査との比較を試みる。選択肢にそれぞれ1~5点を割り当て、校内項目9項目、校外項目12項目の合計スコアを算出した(方法は2016/3/15Newsweek舞田敏彦氏の記事を参照)。PISA2015の点数レンジはそれぞれ9~45点、12~60点となる。
同様にPISA2009とPISA2012の同カテゴリもスコアを求めた。過去調査はいずれもスコアの元になる項目数が異なるので、スコアレンジを0~100%の割合に直して各調査の各国平均散布図を起こした。平均値には45%を超えるものがないので、全てのグラフの軸は0~50%で統一している(中国と英国はPISA2015しかデータがないので注意されたい)。
大きく変化した国しなかった国
私の講演では日本の教育情報化遅滞を示すデータとしていつもPISA2012の結果を紹介しているのだが、これらのデータについてもアップデートしておきたい。いずれのグラフも(ほぼ毎日+毎日)の割合でソートしてある。
まずは、【学校で課題のためにインターネットを閲覧する】項目。PISA2012→2015でいずれも利用頻度は上がっている。主要10カ国の中では上位3国オーストラリア・デンマーク・スウェーデンはほぼ毎日以上が50%を超えた。中位のエストニア・シンガポール・フィンランドも10%以下が10%後半から20%になり、一方でまったく利用しない率も30%程度にまで減少している。
台湾・韓国・日本はやや変動があるものの、割合としてはそれほど大きな違いが見られない。
次は【校外のコンピュータで宿題をする】項目。
主要10カ国のトップ、デンマークは(ほぼ毎日+毎日)が51.3→61.9%になり、スウェーデンも22.2→33.3%となった。一方、オーストラリア、エストニア、シンガポール、韓国、フィンランド、台湾、日本には大きな割合の変化がない(フィンランドは宿題を出す習慣があまりないと言う話は先に述べた通り)。
日本の(まったく・ほとんどない)の割合の大きさは各国の分布のなかではかなり特異だ。
ここまで格差が酷くなる前にいくらでも打つ手はあったように思うのだが、少なくとも以前はこの業界にはこうした世界的な遅滞を示すデータがまったくといってよいほど上ってこなかったことも事実(単なるアンテナ不足かもしれないけど)。
これを是正すべき格差と考えるかどうかが問題だが、いまのところ政策を担う側にはまったく危機感がない。技術大国日本と学力世界一日本の評判の上に胡座をかいて世界の趨勢から目を反らし続けると、そのうち目に見える形で手痛いしっぺ返しを喰らうことになるだろう。
参照:舞田敏彦(2016) 日本では教育現場だけがICT化から取り残されている, Newsweek日本版,http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/03/ict.php