ICTは教具か文具か

PISA2018分析シリーズ その4

PISA2018分析のもくじはこちらその3からの続き

項目群IC152は、学習や指導でのデジタル機器の使用者について科目別に尋ねている。

先月、次の教科の授業で、学習や指導のためにデジタル機器は使われましたか。
それぞれについて、あてはまるものを一つ選んでください。

回答選択肢は、① はい、 先生と生徒の両方 が使いました、② はい、生徒だけ使いました、③ はい、先生だけ使いました、④ いいえ、⑤ この教科を受けていない の5択。
科目は、国語・数学・理科(科学)・外国語・社会科(社会科学)・音楽・保健体育・美術(視覚芸術)。日本の科目には記載がないが、他国は舞台芸術も含まれている。
この項目はPISA2018で新たに加えられたものだ。

日本の文具率は世界最下位

図1 学習や指導でのデジタル機器の使用者(主要国別)

図1は全科目の数値を合計して、各国/地域の特徴を表わしたものだ。全回答のうち、①教員生徒共使う+②生徒のみ使うが占める割合を【文具率】と仮置きして、数値の高い順にソートした。文具率の全体平均は41%、最上位はデンマークの91%、日本の位置付けは54カ国/地域中最下位のわずか16%だ。

日本・韓国・台湾が同じような傾向になるのは既定路線だが、韓国はグレーの「教員のみ使う」の比率が特に高い。シンガポールや英国もバランスとしてみると教具的扱いが比較的高いことが分かる。

主要科目の約40%は文具的活用

図2 学習や指導でのデジタル機器の使用者(科目別)

データを科目別に集計し直してみると(図2)、主要科目(国語・数学・外国語・科学・社会科学)と実技科目(視覚芸術・舞台芸術・音楽・体育)では傾向が違う。
主要科目の文具率は46~37%、「教員のみ使う」の割合はだいたい25%前後、「使わない」が約30%という割合だ。実技科目は非履修者が多いので単純比較は難しいが、文具率は20%前後というところ。

デンマーク・シンガポール・韓国・日本で科目別の割合を記事最後のスライドにまとめた。それぞれの教育へのアプローチの違いがはっきり現れている。デンマークの主要科目の文具率は95~88%にのぼるが、日本の主要科目の文具率はわずかに21~9%だ。

文具率は授業内利用頻度と相関する

IC150/151項目群(授業内外の利用頻度)の結果とIC152項目群(学習や指導での機器使用者)が似通った傾向を持っていることに気付かれた方も多いだろう。そこで、IC150/151項目群から算出した授業内外の利用頻度スコアと、IC152項目群から算出した文具率で相関を求めたところ、次の通りであった。r=0.822, 0.717はかなり高い数値である。

IC152
文具率
IC150/151
主要科目授業内活用
IC150/151
主要科目授業外活用
文具率 1.822.717
主要科目授業内活用 .8221.608
主要科目授業外活用 .717.6081

つまり、単純に言えば「文具率が高ければ、利用頻度も高い」。文具率と主要科目授業内活用頻度スコアのデータを散布図に示すと図3の通りとなる。

図3 文具率と主要科目授業内利用頻度の散布図

この結果は筆者が長年主張してきた事の裏付けなので、何度も言説を見ている方にとっては、まあ、そうだろう、という感想しかないかもしれない。一方で、教員主導型の一斉授業でICT利活用促進を目論んできた人々にとっては大きな打撃だろう。
繰り返しになるが、つまりはこういう事だ。

  1. ICTは増幅機と同じなので、(学習)効果を得るには、扱い情報量と利用時間を高め、総情報量の多さで圧倒するしかない。
  2. 教員主導型のICT活用は、教員の統制と管理を伴うので、利用抑制的にはたらき、トータルの利用頻度は伸びず、効果も十分得られない。
  3. 学習者中心のICT文具的活用で、学習者側の自由度を上げることで、利用頻度は向上する(ただし、扱い情報量が増えても、使い方が適切でなければ学習効果にならないのは当然だ)

まとめ

  • IC152項目群は、学習や指導でのデジタル機器使用者について尋ねている。
  • 「教員生徒共使う」「生徒のみ使う」が占める割合を文具率とすると、全体平均は41%、最上位はデンマークの91%、日本は54カ国/地域中最下位の16%。
  • 文具率と授業内活用頻度スコアの相関は0.822。文具率が高ければ、利用頻度も高い。

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