学習手段の冗長化

登校不可状況で学びをどう保障するか

 先日もGIGAスクールで「モデル校」を名乗った学校は、新型コロナウイルス対策の業務持続ノウハウを提供すべきと書きましたが、デジタルシフトが完了した学校ならは、登校不可でも代替手段(プランB)は問題なく提供出来るはずでしょう。N高のように。

新型コロナウイルス感染拡大を受け
来週よりN高「通学コース」を自宅からオンライン登校へ
3/18の卒業式をネット参加のみに変更します

ニューストピック https://nnn.ed.jp/news/blog/archives/9990.html

 さて、デジタルシフトとは、個人所有のデジタルデバイスにメディアが統合され、日常で扱える情報量が数百倍になることですが、学校のデジタルシフトは、学習者が校内外を問わず利用出来る①1人1台情報端末整備②クラウドを介したマルチデバイス利用を前提とします。

 今回のウイルス騒動のように、1箇所に人が大勢集まる事がリスクになる場合、学校教育のような1900年代の工場(生産設備を集約拠点化して生産性を上げる)モデルは簡単に破綻します。 毎日の登校を当然としてきた学校は、この前提条件を外すと機能停止するので、当事者は容易に登校停止を決断出来ないでしょう。

 だからといって、決断を先延ばしすれば、いずれ学校はホットスポット化して管理責任を問われます。事態はすでに切迫した状況です。自治体や学校により前提は違いますが、デジタルシフトによる学習手段のリダンダンシー(冗長化)を活かした対応について、簡単にまとめてみます。

まず必要なのはコミュニケーション手段の確保

 ① 児童生徒保護者をつなぐ手段の確認内閣府による小中高生対象調査でも9割以上はネットアクセス可能なので、スマホレベルのコミュニケーションをひとまず前提と考えましょう(残りは個別対応せざるを得ませんが)。これだけでも、学校側の紙文書印刷・郵送の負荷は大幅に軽減します。

 ② ウェブサイト・メール等手立ての確認:校内限定しないシステムなら遠隔のPCでも更新可能です。文書レベルの通知や学習材の配信であれば、これで機敏に対応出来ます。数ヶ月に1度しか更新しない学校サイトが大半ですが、システム自体は1日100回以上更新しても何の問題もありません。

 ③ 映像配信手段の確保:映像配信には効果があります。Youtube・Facebook Live・Zoomなど映像配信系のサービスが遮断されていなければ、まずは短時間のトップメッセージで、児童生徒や保護者を安心させる事を考えましょう。映像はインカメラの付いたPCやタブレット・スマホで簡単に作成出来ます。

クラウドサービスと遠隔会議・映像配信

 ここから先はGoogle等のクラウドサービスが前提です。セキュリティ等を理由に遮断されている学校は、この際だから教委や管理職と交渉しましょう。

 ④ 情報収集はフォームで:児童生徒や保護者から反応を募る場合、紙・メール・メッセージを使うと扱いが煩雑なので、ウェブフォームを用います。回収や転記の手間がなくなるので、集めた後のデータ扱いは格段に楽になります。

 さて問題は授業です。一斉授業が無理だと、夏休みのように大量のワークを持ち帰らせて「やっとけ」指示になりがち、とはいえ、素性の分からない業者サイトでにわかにドリル学習させるのもちょっと放り出し過ぎです。付かず離れずで上手く乗り切るにはどうすれば良いか?ってことですね。

 ⑤ 遠隔会議・映像配信システムの利用:オンタイムで授業をしたいのなら、ZoomやHangoutの遠隔会議が使えますが、少人数のディスカッションに限ります。一方、講義が中心ならライブまたは録画配信で良いですし、講義映像は無理に全部自分で撮らなくても、Youtubeにも良いものがあります。

 ただし、通常授業と違って映像配信にすると撮影側の負担も重くなりますし、視聴側も動機づけを保つのが難しくなるので、動画は出来るだけ短時間に。代わりに、学習者の手元で出来る作業に振り向ける事を考えます。

Classroomと学びの協働化

2020年 フィンランドの高校数学授業とGoogle Classroom

 ⑥ Classroomの活用:Classroom(LMS)を使えば、動画による説明、課題割当て、回収・返却まで一通りのシナリオがデザイン出来ます。授業途中の質問は、授業の公開ストリームにコメントを許可して共有するか、チャットツールで個別に対応します。

2013年 フィンランドの中学校・作業中にチャットで質問に答える先生

 ⑦ 双方向性の確保:遠隔型の授業は、通常授業と違って学習者の様子が直ちに分からないので、双方のライブ感に乏しく意欲を削がれやすくなります。学習者側から反応を返しやすくすために、いいねボタンや小問題で答えてもらったり、コメントを共有する工夫は必要です。

 ⑧ クラウド系オフィスツールによる協働:PC利用が前提ですが、G SuiteやOffice365のクラウド系オフィスツールであれば、ペア以上の協働学習で威力を発揮します。グループに課題を割当て、チャットツールで段取りや相談をし、下書き文書を共有して同時に書き込みながら、レポート作成が出来ます

 グループメンバーに教員を加えておけば、進捗も遠隔で把握出来ますし、途中でコメントを加えることも出来ます。こうした展開は(しばしば海外事例でもご紹介する通り)通常授業でのグループワークで慣れておけば、いざ全員遠隔でやっても上手くいくものです。

2013年 スウェーデンの小学校
G Suiteを用いたペアワーク

学びの社会化

 ⑨ 学びの社会化:まとまったレポートや作品を共有したり公表するための手段もまた必要です。クラウド系のツールにはSitesやブログサービスが含まれるので、海外では学習成果をページやブログ記事にまとめる事もよく行われます。URLを限定公開して、友達や保護者からフィードバックをもらうところまでが活動です。

 とまあ超大雑把ですが、デジタルシフトによる学習手段のリダンダンシー(冗長化)をまとめました。 一斉授業ではコマンダー(教員)が逐次先導しないと授業成立しないのですが、学習者中心のICT文具的活用は、学習者に委ねる部分が大きい分、時や場所の制限を解いても学習成立する、ということが分かります。

 これらは、これまでICT利活用モデルと呼ばれてきた学校が、今回どこまで対応可能かが問われる、まさに負荷試験のようなものです。
 一斉授業内の小ネタ程度の活用を誇っていた学校は、③から先は対応不可でしょう。使えるはずの情報環境に、フィルタリングや禁止事項で使えなくしている教委や学校が多い、という現状を省みるにも良い機会だと思います。

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