08 二種類の信頼関係
学校とステークホルダとの信頼関係には、思い込みの関係と、現実認識に基づく関係の二種類があります。学校広報が形成を目指すのは、「現実認識に基づく信頼関係」です。
思い込みの信頼関係は、見せかけの信頼関係であり、具体性をもちません。トラブルや対立が起きない限り、ほとんど問題は生じませんが、一度思い込みが崩れて、現実が暴露されるような事態が生じれば、ステークホルダ側は信頼の裏返しとして失望と裏切られ感で満たされてしまい、関係を修復するのには長い年月を要します。
思い込みの信頼関係は、面倒を避けたい学校側の意向と、面倒に立ち入りたくない(お任せ)にしたいステークホルダ側との共犯によって生じます。
特に、学校は立場的に保護者・地域と対等でないので、信頼関係を疎外する要因に鈍感になりがちです。たとえば、十分な意思疎通の実績がなくても、「ウチの地域は学校との信頼関係があるから大丈夫」と思ってしまいます。アンケートなどで表面的には、そこそこの満足と信頼が得られているように見えても、保護者・地域側では、小さな疑念や不満がくすぶっていることは少なくありません。
一方、ステークホルダ側の思い込みは、学校に対する理想を肥大化させることで生じます。「学校かくあるべき」との意識が強いほど、思い込みが崩れたときの落胆は大きなものになるでしょう。
学校には成長過程の様々な児童生徒が在籍する以上、どんなに注意を払っても、事故・トラブル・課題のたぐいを完全に防ぐことはできません。ただ、そのようなネガティブな事象が原因で、思い込みの信頼関係が崩れた場合、事象が発生した事自体に批判が集中しやすいので、学校側はこのような情報をあまり表に出したがらない傾向があります。
学校にとって最も建設的な方策とは、思い込みの信頼関係を維持するために、ネガティブな事象を封じ込めることではなく、むしろ、現実認識を共有してステークホルダとの関係を維持しつつ、円滑な問題解決を図ることにあります(なにごとも言うは易く、行うは難しですが)。
現実認識に基づく信頼関係とは、つねに具体的な事物に結びついて発展するものです。したがって、地に足の着いた信頼関係を築くためには、ステークホルダに対して、誠実に、かつ、ある程度以上の頻度を保って学校の情報を伝えることが必要です。