用語解説:デジタルシフト
講演等ではよく紹介するけど、書き物にしていなかった用語をフォローしておきたい。智場#120から使うようになった「デジタルシフト」について。
次の写真はホームページ等でしばしば目にする分かりやすい比較だ。
写真の意図するところは、1980年代には様々なメディアを扱うために家電製品や物理的なメディア(ビデオテープやCD)があふれていたのに、2010年代になるとほとんどがスマートフォンに統合され、物理的なメディアもほぼ不要になってしまったということ。
つまり、デジタルシフトとは、1)個人が所有する携帯情報端末に多様なメディアが統合され、2)所有者が一度に扱える情報量を数倍にすることをさす。
個人の情報端末携行によってデジタルシフトが起こるので、情報端末はもはや現代生活とは切り離せないキーデバイスになっている。
(少なくとも現状の日本の)教育にICTを導入する意義は、「学びにデジタルシフトを起こすこと」だと言い切ってもよい。
もちろん、デジタルシフトは、扱い情報量の倍増効果を示す単純な概念に過ぎないので、これを能力や知的生産性に転換するか、あるいは、消費や娯楽に費やすか、というのは別の次元(情報活用能力)の問題だ。
教育関係者は、情報量増加に伴って子どもが情報に翻弄されたり、刺激への依存が起こったりすることを懸念しがちだが、与える情報そのものを教員がすべて制御・制限する発想では、学習者側の情報受容のミスマッチ(オーバーフローや欠乏)は起こり得ても、学習者の能動的なデジタルシフトは起こらない。
デジタルシフトが起こらなければ、ICTを教育で扱う意義はないのだから、扱い情報量の倍増効果に見合った学習者側の能動的な情報活用能力開発が必要なのは言うまでもない。
余談だけど、「いや、そこはデジタルシフトじゃなくてデジタルトランスフォーメーションでしょ」とツッコんだあなたはえらい。なんで、シフトにしたのかという理由は次の記事で解説する。
(つぎへつづく)