情報収集公表にオープンなインターネットを用いること

触媒的学校評価のポイント4
「独立性を担保するため、情報収集・公表にオープンなインターネットを用いること」

第三者が制度からの独立を保ちながら、外部から詳細な評価を行うということは、10年以上昔なら絶対に考えられなかったことだ。今でも、適用範囲はきわめて限られるから、一種アクロバットに近いものがある。何故なら、評価のための情報とは、ふつう組織系統の内部でしか得られないからである。しかし、歴史的にはインターネットのオープン性が、全ての不可能を可能に変えてきた。

インターネットのオープン性が、触媒的学校評価の枠組みに及ぼした影響とは、次の4点である。

  1. オンデマンドで情報を即座に提供・入手できる方法が広く社会に普及定着したこと
  2. アカウンタビリティ(説明責任)やコンプライアンス(法規遵守)のために、情報公開やビジネス・プロセスの外部透明性がより強く求められるようになったこと
  3. 膨大なインターネットの情報ソースを元にした付加価値型(検索エンジン)サービスが起こったこと
  4. 情報収集・解析・情報提供を行うサービスが安価に構築可能になったこと

すべては、一番目のインフラとしてのインターネットが普及したことに始まるのだが、学校側にとっては、自らの活動の正当性を社会に示すために、情報公開を強く動機付けられるようになったこと(二番目)が、決定的な変化であろう。
平成19年の学校教育法改正では、第43条に「教育活動・学校運営状況に関する積極的情報提供」が明文化されるに至ったので、学校側の都合で情報をクローズにしておくことは、もはや許されなくなった。触媒的学校評価は、原則として、オープンな情報ソースからしか情報を収集しない(できないというほうが正しい)ので、情報公開に対して社会的な要請が高まることは、望ましい方向といえる。

三番目は、もっぱらサービスを提供する側の問題である。
現在の制度や公的な教育サービスには、そもそも、学校側から日々生まれる情報を、自動的に集約・解析するような発想や仕掛けはない。例えば、中央に出来合いの情報を集積して、一方的に配信するようなサービスは、利用側の学校の状況には一切関知しないので、インターネットを用いていながら、実はまったくインターネット的ではなく、中央集中型のメインフレーム型のサービスそのものである。
昨今インターネット的と言えるのは、初期のGoogleの検索エンジンビジネスのように、インターネット上の膨大な情報ソースを集約、解析したうえで、付加価値をつけてフィードバックするような形態のことである。

触媒的学校評価が扱うのは、学校側がインターネットを通じて提供する情報のうち、 意識せずに取りこぼしたり、埋もれたりしやすい記録や履歴であったり、学校側が十分了解できない先導的なアイデアであったりする。つまり、学校自身の関心が及びにくいニッチな領域に関して、各学校の取り組みを後押しするために、インターネット的なサービスを展開することにこそ意味がある。

四番目ももっぱらサービスを提供する側の問題である。
アーキテクチャの詳細はさておき、ここで述べておきたいのは、制度から独立した第三者(具体的には一研究者)が、個人でもサービス立ち上げ可能であるという事だ(いまだにi-learn.jpは個人で運営していると説明しても、信じてもらえない事が多いのだが)。
インターネット以前ならば、国の機関か大企業のメインフレームでしか扱えなかった情報が個人で扱えるようになれば、彼らが立場上展開できなかった領域にも到達することができる。触媒的学校評価は、その具体的可能性を示しているのである。

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