1人1台整備の様々な形態

(注)本記事は初出2018/3/07の記事を2020/3/4に加筆修正した

昨日のブログ記事では旺文社の高校ICT活用状況調査を扱った。特に大都市圏の私立中高では、2016年以降生徒1人1台の学習者端末整備の検討が積極的に進められている。ただし、1人1台とはいっても導入・運用の形態は様々なので(いまさらという気もするが)一応整理しておきたい。

上図は自分の講演でよく使うキースライドである。識者の中にも1:1(One to One)1人1台とBYOD(Bring Your Own Device)の使い方が間違っている人が多いので、違いを分かりやすくするために、筆者はSOID(School Owned Internet Device:学校が管理するネット端末)の用語をあてている。また、2018年以降経済産業省「未来の教室とEdTech研究会」で新たに加えられたBYAD(Bring Your Assigned Device)を加えた。以下はそれぞれの比較的テクニカルな特徴についてまとめた。

自由持込(BYOD)

厳密なBYODは個人所有機材の勝手持込みのみを指す。大学レベルでの通常講義はこれが基本。BYODを政策レベルで実現しているのがデンマークで、学校ではスマートフォンからノート型PCまで様々な機材が机上に並ぶ。2018年度から都立高校10校でのモデル試行が行われた。

  • 学習者がふだん使い慣れた機材を持ち込むので操作トラブルが起こりにくい。
  • 日常のプライベートと学校での学びが緩やかにつながる環境が構築出来る(指定購入・機材貸与も同じだが、BYODはプライベートが主)。
  • マルチプラットフォームのクラウドサービスを使えば、授業や用途にあわせて持ち込む機材を変えても、作業環境は保たれる。
  • 機材管理は学習者側で行うので、学校側の人的・経済的負担が軽減される。
  • 様々な機材が混在するので、統一的操作指示が与えられない。
    →基礎的操作に慣れていれば、大雑把な指示でも子どもは十分対応出来る。
  • プラットフォームに依存するアプリが動作しない。
    →最近はマルチプラットフォームが基本、ブラウザベース(HTML5)で稼働するものが多くなっている。特定プラットフォーム依存は逆にリスクになる。
  • (経済的理由で)持ち込めない子への対応が必要。持ち込んだ機材が用途に合わなかった場合や不調な場合の対応が必要。
    →デンマークでは持込み出来ない子に対して学校側が補償するよう定めている。代替手段の確保は必要。図書館やオープンスペースにデスクトップ機が置かれていたり、予備用のノート型タブレット型PCのカートが設置されていたりする。
コペンハーゲンの学校にて、公民の授業で先生から課題をもらってグループで検討中。机上の機材はバラバラだ。

指定購入(BYAD)

学校が推奨機種を決め斡旋購入する方法は、BYODに対してBYAD(Bring Your Assigned Devide)と言う。経済産業省「未来の教室とEdTech研究会」以降割り当てられた言葉だ。 佐賀県立高校は当初BYADでスタートしたが、2018年度から機材貸与(SOID)に方式を転換した。 私立中高の整備はこちらが中心。

  • 指定購入(BYAD)か次の機材貸与(SOID)かは、要するに費用負担先の問題。BYADの保護者負担にすれば、数年(おおむね3年)おきに数万円の支出が伴うので、当然保護者からの物言いが付きやすくなる。自分の好き勝手に使えない、せっかく買ったのに学校で使ってないじゃないか等。一方、SOIDの公費負担にすれば財政負担が大きくなるので、ただでさえ財政状況がよくない自治体は事業継続が難しくなる。
  • 公立の場合は政策ポリシーと深く関わる。スウェーデンは就学費用は全て公費負担する原則があるので、自治体からの個別貸与は当然ということであった。
  • 我が国では、2019年12月からGIGAスクール構想で小中学生1人1台(4.5万円/台)の整備が展開されるが、当初のコンセプトにもある通り、これは世界的にも遅れている状況を転換するための緊急措置的な予算で、持続的なものではない。事業が終わる数年後には、BYOD・BYADいずれかへの転換を余儀なくされるだろう。
  • あとはほぼ機材貸与(SOID)と同じ。

機材貸与(SOID)

家に持ち帰り可であればBYODと言われる事も多いが、こちらは学校側が機材選定や管理に関わるので、SOIDをあてるのが妥当。公立校での1人1台整備はこちらが中心。

  • 機種統一出来るので、逐一正確な手続き指示が行える。
    →それを気にするのは導入初期か、稼働率の低い学校だけなのだが
  • 使用環境や導入アプリを学校側がすべて指定・管理・制限出来る。
    →管理統制出来れば逸脱は起こりにくくなるが、一挙手一投足を教員が全て管理するのは非現実的。一般には統制度が上がるほど稼働率は下がる。
    →学校用途専用アプリに依存すると、学習用途以外には使えなくなる。
  • 持ち帰り・持参が原則なので、日常利用を前提にできる(BYODと趣旨は同じだが、指定購入・機材貸与の場合は学校側の都合が主になる)
  • 可搬型のノート型かタブレット型を選択することになるので、用途によっては不適切な環境になることがある(画面が小さい、キーボードが使えないなど)
    →BYODと同様、代替手段の確保は必要。
  • 日常活用出来ていれば破損・修理はあまり大きな問題にならないが、文鎮化(授業では使わないのに毎日生徒に持参させる)が進むと、破損・盗難・紛失が頻発する。重いし、自分のモノでもなければ大切にする理由もない。

共有利用(1:1ではない)

1人1台を授業中に割り当てられる機材のことだと理解している人もいるが、個人が常時使える形態でないものは、全てこちらのカテゴリに入る。要点としては、1人1台で個人用の機材整備やBYODを行うことと、共用利用機材の整備は、どちらか択一ではなく両方とも必要ということだ。

1人1台の端末仕様は、学習者が普段使いする鉛筆とノートのようなものなので、端末単価をなるべく低く抑えるために、画面サイズが小さい、頑丈だが重い、CPUパワーは必要最小限、修理対応が十分でなかったりする、など、これまでの一般的なコンピュータの運用保守とは異なった点がある。
1人1台時代の共用利用機材は、①個人の端末が不具合を起こした場合の代替、②高度な創作活動(映像編集・印刷レイアウト編集など)でコンピューティング・パワーを必要とする場合に必要とされる。

あわせて読みたい