日本の学校機器環境は貧しい
PISA2018分析シリーズ その8
IC001/009項目群の分析続編。今回は学校機器・設備の利用率(IC009)について、細かく見てみよう。あらためて項目群の問いは次の通り、
ここからは、携帯電話、デスクトップ・コンピュータ、ノート型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ゲーム機、インターネットに接続しているテレビなど、様々なデ ジタル機器の利用状況についてお聞きします。
次のもののうち、学校であなたが利用できる機器はありますか。
それぞれについて、あてはまるものを一つ選んでください。
回答選択肢は、① はい、使っています ② はい、でも使っていません ③ いいえ の3択。
項目の入替えはあるもののPISA2009から継続調査されている項目群である。ちなみに同項目群のPISA2015の分析記事はこちらにある。
全項目が全体平均に及ばない
図1は学校機器設備の利用率(①はい、使っています)の各国/地域の割合をプロットしたもの。黄色線が日本、灰色線が全体平均を示している。
一瞥して分かるように、全項目が全体平均に及ばない。特に、データプロジェクタ以下の7項目は最下位付近にある。散々な結果だ。
日本は2009年から大きな変化がない
図2は日本のみを抽出して、過去のPISA調査データと比較したもの。黄色線は日本のPISA2018のデータを示す。灰色が2015、橙色が2012、青色が2009をそれぞれ表わしている。
インターネット接続PC、データプロジェクタ、タブレット型PCなどいくつか数値改善しているものの変動幅は15%を超えるものはなく、2009年の状況から大きく変わっていない。
比較のためにシンガポールの利用率推移を図3に上げておこう。いくつかの例外はあるものの、全般的に数値改善がみられ、特に、ポータブル(ノート)型PCやタブレット型PCは、大幅に数値が向上している。ICT環境の充実をきちんと図ってきた国と、それを半ば放置してきた国との違いがここにもはっきりと現れている。
日本の状況は10年近く変わらない、こんな特異な環境に半ば慣らされている、という事には危機意識を持った方が良いだろう。いまさら日本国内での「ICTを学習でどう使ったら良いか分からない」なんてボヤきは、他国の教育関係者から見れば苦笑の対象でしかない。
まとめ
- IC009は学校の機器設備の利用について質問する項目群
- 日本の利用率は全ての項目が全体平均に及ばない
- 過去データと比較しても日本の利用率は15%以上の改善がなく、長年停滞している