校外でも学びにICTを活かせない日本

PISA2018分析シリーズ その12

PISA2018分析のもくじはこちらその11からの続き

IC010は校外のデジタル機器利用頻度(学習用途)について尋ねる項目群である。

あなたは、次のことをするために学校以外の場所でデジタル機器をどのくらい利用していますか(携帯電話での利用も含む)。

回答選択肢は、 ①まったくか、ほとんどない ②月に1~2回 ③週に1~2回 ④ほぼ毎日 ⑤毎日 の5択。
項目群としては次のような質問である。

  • 学校の勉強のために、インターネット上のサイトを見る(例:作文や発表の準備)
  • 関連資料を見つけるために、授業の後にインターネットを閲覧する
  • Eメールを使って学校の勉強について、ほかの生徒と連絡をとる
  • Eメールを使って先生と連絡をとり、宿題やその他の課題を提出する
  • 学校の課題について他の生徒と連絡をとるために、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を利用する(例:LINE)
  • 先生と連絡をとるために、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を利用する(例:LINE)
  • 学校のウェブサイトから資料をダウンロードしたり、アップロードしたり、ブラウザを使ったりする(例:時間割や授業で使う教材)
  • 校内のウェブサイトを見て、学校からのお知らせを確認する(例:先生の欠席)
  • コンピュータを使って宿題をする
  • 携帯電話やモバイル機器を使って宿題をする
  • コンピュータを使って学習ソフトや学習サイトを利用する
  • 携帯電話やモバイル機器を使って学習ソフトや学習サイトを利用する

この項目群はPISA2009以降継続調査されているが、調査年によって項目構成は若干違う。
分析では、④ほぼ毎日 ⑤毎日が占める割合を集計して比較してみよう。

SNS以外学びに活かせない日本

図1 PISA2018 学習のためのデジタル機器利用の国別割合

図1は各国/地域の占める割合をプロットしたものだ。黄色線が日本、灰色線が全体平均を示している。 全体平均では、大半項目でおおむね20~30%に収まっているが、日本の数値は「学校課題について他生徒とSNSを使う」の28%以外、全て10%以下だった。

日本は機器利用に長らく変化がない

図2・3 PISA2012~2018 学習のためのデジタル機器利用の推移
(日本・全体)

上図ではPISA2012~2018のデータを抽出してプロットした。左の図2が日本、右の図3が全体平均である。 図1とは横軸のスケールが違う事に留意。

図2の日本のデータの一番上にある「学校課題について他生徒とSNSを使う」は、PISA2015→2018で15→28%と大幅に増えている一方、「学校の勉強について他生徒とメールで連絡する」はPISA2012→2018で16→4%に減っている。メールが携帯電話のプライベートなキャリアメールであることを考えると、これは前回の傾向に沿ったものと考えられる。しかし、これらはあくまで生徒個人のプライベートな機器利用に限った話だ。
他の項目には、ほとんど変化が見られない。つまり、学習用途のデジタル機器利用は、長年停滞したままであることを示している。プライベートで利用可能な学習用サービスに関しても、ほとんど使われていない、というのは少々驚きだ。

図3の全体平均をみると、PISA2012→2018で大きく増えた項目は、
・校内ウェブサイトでお知らせを確認する
・携帯電話やモバリル機器で学習ソフトや学習サイトを利用する
・学校ウェブサイトから資料をダウンロード・アップロードする
・コンピュータを使って学習ソフトや学習サイトを利用する
・メールを使って先生と連絡をとる
であった。
厳密な区別は出来ないが、おおよその項目が学校の公式なサービスやカリキュラムと関連しているところに特徴がある。

高水準の国にも特徴がある

図4・5 PISA2012~2018 学習のためのデジタル機器利用の推移
(エストニア・タイ)

では、比較的高水準にある国ではどのような特徴があるだろうか。図4と5はそれぞれエストニアとタイのデータを示した。図1とは横軸のスケールが違う事に留意。

図4のエストニアはPISA2018の学力調査で大躍進が目立つ国で、バルト海の小国ながら電子政府に力をいれている事でも知られる。いずれも日本の項目数値より高いが、過去のPISA調査データと比較すると、減少傾向がみられる項目があることが興味深い。

図5のタイは、アジアのPISA調査参加国では特徴的な傾向を示しており、デジタル機器利用に関してはかなり積極的だ。PISA2012の結果がないので単純比較は出来ないが、PISA2015→2018でも10%以上増加している項目が目立つ。元々の教育環境がやや貧困であったことを考えると、タイはICTをテコにしてリープフロッグ型発展を狙っているように見える。

まとめ

  • IC010項目群は校外のデジタル機器利用(学習用途)について尋ねている。
  • 日本は「学校課題について他生徒とSNSを使う」28%以外はすべて10%以下で、PISA2012以降ほとんど変化がない。
  • 全体平均でみると、学校の公式なサービスやカリキュラムと関連する項目がPISA2012→2018で伸びている。

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