情報環境の各国特徴を大雑把につかむ
2016/12/6に発表されたOECD PISA2015の【ICT親和性項目】の分析・考察第5弾をお届けする。ICT親和性項目の内訳と本稿の内容は次の通り。
IC001 家庭の情報機器環境(利用するか否か)←今回もこれIC009 学校の情報機器環境(利用するか否か)IC002 初めてデジタルデバイスを使った年齢IC003 初めてコンピュータを使った年齢IC004 初めてネットアクセスした年齢IC005 平日学校でのネット利用時間IC006 平日校外でのネット利用時間IC007 週末校外でのネット利用時間IC008 校外の私的用途ICT利用頻度IC010 校外の学習用途ICT利用頻度IC011 学校でのICT利用頻度IC013~015 ICTに関する意識
本稿は前回【IC001・009 家庭・学校における情報機器環境】の続き。
前回では各情報機器環境が(設備として利用可能)なケースを国別に集計したが、これだけでは国毎の傾向が掴みにくいので、今度はクラスタ分析を使って大雑把に仲間分けをしてみよう。
クラスタ分析をごく簡単に説明すると、項目反応の似たもの同士を集めてグルーピングする方法である。要素間距離は平方ユークリッド距離を、クラスタ化にはWard法を用い、各国家庭・学校双方の(設備として利用可能)な項目の割合を投入して分析を行った。
結果のデンドログラム(樹形図)は図1の通りで、主に4つのクラスタ群が抽出された。それぞれのクラスタに属する国は以下の通り。
第1クラスタ Australia, Denmark, Finland, Iceland, Netherlands, New Zealand, Sweden, United Kingdom
第2クラスタ
Austria, Belgium, Bulgaria, Czech Republic, France, Ireland, Italy, Luxembourg, Portugal, Russian Federation, Slovak Republic, Slovenia, Spain, Spain Regions, Switzerland
第3クラスタ
Brazil, Chile, Chinese Taipei, Colombia, Costa Rica, Croatia, Estonia, Greece, Hong Kong, Hungary, Israel, Latvia, Lithuania, Macao, Poland, Singapore, Thailand, Uruguay
第4クラスタ
China, Dominican Republic, Japan, Korea, Mexico, Peru
以下には各クラスタの平均と日本の値をプロットした。
ざっと見ると第1・第2が優位で、第3・第4が劣位にあるが、第1クラスタはもう少し特徴的だ。家庭で見るとノートPC・タブレットPC・ゲーム機の普及度は他群よりも明らかに高いが、デスクトップPCや携帯音楽プレーヤーは第2クラスタよりも低い。学校環境では、ネット環境、無線ネットワーク、データ保管領域、ノートPC、タブレットPCの割合が他群を大きく離している。
つまり、第1クラスタは、携行性と操作性を両立するノートPCやタブレットPCへの移行が家庭でも学校でも進行している、いわゆる先進国としての位置付けである。第2クラスタはWi-Fi普及率が低いので、まだ有線LAN接続のデスクトップPCの環境が優勢だ。
第3クラスタは第2の平均に近い項目がいくつかあるのに対し、第4クラスタは他群よりも圧倒的に低い値の項目が多い(日本は第4クラスタの中でも独特なのだが)。ドミニカ共和国、メキシコ、ペルーはなんとなく似通ったものを想像するが、中国、韓国、日本が同じクラスタにある理由を考えると、単に国家財政や経済的豊かさでなく、その国で支配的な教育方法・技法が大きく影響していることが示唆される。