PC利用率は減ったのか増えたのか

PISA2018分析シリーズ その5

PISA2018分析のもくじはこちらその4からの続き

項目群IC001/009は、家庭・学校にあるデジタル機器ついて尋ねている。

ここからは、携帯電話、デスクトップ・コンピュータ、ノート型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ゲーム機、インターネットに接続しているテレビなど、様々なデ ジタル機器の利用状況についてお聞きします。
次のもののうち、自宅/学校であなたが利用できる機器はありますか。
それぞれについて、あてはまるものを一つ選んでください。

回答選択肢は、① はい、使っています ② はい、でも使っていません ③ いいえ の3択。
項目の入替えはあるもののPISA2009から継続調査されている項目群である。

日本の子供のパソコン使用率が低下は本当か

2020/1/8付ニューズウィーク記事がちょっとした話題だ。

日本でも生活様式のICT化が進んでおり、以前に比したら子どものパソコン使用率も上がっていると思われるかもしれない。しかし日本の15歳生徒のパソコン使用率(自宅)は、2009年の48%から2018年の35%へと下がっている。何とも奇妙だが、このような国は他にあるのだろうか。

舞田敏彦「世界で唯一、日本の子どものパソコン使用率が低下している」
ニューズウィーク日本版(2020/1/8)

記事の趣旨としては、このブログの主張に沿うものでまったくその通りなのだが、全部をパソコン使用率と括ってしまうのはちょっと危険かもしれない。デスクトップ・ポータブル(ノート)・タブレットでは少々傾向が異なるからだ。舞田氏とは違う集計方法でそれを検証してみよう。

3種のPCで異なる傾向

PISA2009からPISA2018までのデータを項目毎に整理してみた。カラフルな色プロットは各国/地域で「①はい、使っています」が占める割合で、先に示すのは自宅(家庭)のもので黄色は日本の、灰色は全体平均の数値を表している。図1がデスクトップ、図2がポータブル(ノート)、図3がタブレットである。

図1 家庭のデスクトップ型PC使用率

図1の全体をみると、2009年→2018年にかけて減少傾向にあることが分かる。日本は最下位付近だが全体の減少傾向と同様の動きをしている。

図2 家庭のポータブル(ノート)型PC使用率

図2は2009→2012年で大幅な増加傾向にあるが、以降はあまり大きな変化がない。これに対して日本の割合は2012年をピークに大幅に減っている。これは舞田氏の記事で指摘している通りだ。

図3 家庭のタブレット型PC使用率

図3は2012→2018年にかけて増加傾向にあり、日本のデータもこれに追従するような形で増加していることが分かる。
つまり、デスクトップ型・ポータブル(ノート)型・タブレット型の3種で比較すると、デスクトップ型は全体傾向と合わせて減少傾向、ポータブル(ノート)型は全体傾向に反して大幅減少傾向、タブレット型は全体傾向に追従して増加傾向ということだ。
タブレット型はキーボード中心の使い方が出来ないので、どうしても知的生産よりは情報消費が中心になってしまう課題がある。
舞田氏の指摘は間違いではないが、ポータブル(ノート)型に限ったことである点には留意したい。

学校の利用率変化は?

PISA2015の分析でも扱った話題だが、学校でも3種のコンピュータの利用傾向には国ごとに大きな違いが見られるので、これらも検討してみよう。

図4 学校のデスクトップ型PC使用率

図4をみると2009→2015年で減少傾向にあったものが、2018年に持ち直している。日本はずっと下位にあるものの全体平均の傾向とほぼ同じである。
比較対象でフィンランドを入れてあるが(フィンランドは2012年までは教育向けICT投資をかなり控えめにしていたという背景がある)、2012→2018年でデスクトップ型が大幅に利用率を減らしているのは、機器の入替えによるものだろう。

図5 学校のポータブル(ノート)型PC使用率

図5は学校のポータブル(ノート)型PC使用率を示している。全体的には2009→2018年で持続的に増加している。日本はほぼ横ばいで最下位付近にあるが、一方で、フィンランドは大幅に割合を増やして8割近くある。
上位を維持しているのは黄(オーストラリア)、薄緑(デンマーク)、濃綠(ノルウェー)、灰(スウェーデン)である。

図6 学校のタブレット型PC使用率

図6はタブレット型PCである。2012年時にはほとんど大きな差がないが、2015→2018年と大きな格差になっている。フィンランド以外で上位を維持しているのは、黄(アイスランド)、水色(香港)である。
これらをみると日本は、学校の機器構成と整備状況はほとんど変わらないが、フィンランドはデスクトップからポータブル(ノート)とタブレットへ大幅な転換と増強を図っていることが分かる。

まとめ

  • 項目群IC001/009は、家庭・学校にあるデジタル機器ついて尋ねている。 2009~2018年のPC3種の傾向を検討した。
  • 日本の家庭での利用率は、デスクトップ型は全体傾向と合わせて減少傾向、ポータブル(ノート)型は全体傾向に反して大幅減少傾向、タブレット型は全体傾向に追従して増加傾向にある。
  • 日本の学校での利用率は、大幅な傾向差がなく停滞しているが、フィンランドはデスクトップを大幅に減らす一方、ポータブル(ノート)とタブレットへの大幅な転換と増強を図っている。

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