校内の学習活用もほぼ10年停滞

PISA2018分析シリーズ その13

PISA2018分析のもくじはこちらその12からの続き

IC011は学校内のデジタル機器利用頻度(学習用途)について尋ねる項目群である。

あなたは、次のことをするために学校でデジタル機器をどのくらい利用していますか(携帯電話での利用も含む)。

回答選択肢は、 ①まったくか、ほとんどない ②月に1~2回 ③週に1~2回 ④ほぼ毎日 ⑤毎日 の5択。
項目群としては次のような質問である。

  • 学校でネット上のチャットをする
  • 学校でEメールを使う
  • 学校の勉強のためにインターネットを見る
  • 校内のウェブサイトを見たり、そこからファイルやプログラムをダウンロードやアップロードしたりする
  • 学校のウェブサイトに課題を提出する
  • シミュレーションゲームで遊ぶ
  • 外国語や数学などのドリルや勉強をする
  • 学校のコンピュータで宿題をする
  • 他の生徒と共同作業をするために、コンピュータを使う
  • 学習ソフトや学習サイトを利用する

この項目群はPISA2009以降継続調査されているが、調査年によって項目構成は若干異なる。
分析では、④ほぼ毎日 ⑤毎日が占める割合を集計して比較してみよう。

日本の校内での学習活用は極めて少ない

図1 PISA2018学校でのデジタル機器利用 の国別割合

図1は各国/地域の占める割合をプロットしたものだ。黄色線が日本、灰色線が全体平均を示している。
PISA2015の時とほぼ同じで、日本の数値は見事なまでに左側に貼り付いている。つまり世界最底辺だ。一番数値が高いチャットも、おそらく教員の指示ではなく生徒達が勝手に使うものだ。全体平均でみると、だいたいの項目が20~30%の間に収まっているが、日本の位置からはだいぶ距離がある。

図2・3 PISA2012~2018 学校でのデジタル機器利用の推移(日本・全体)

上図ではPISA2012~2018のデータを抽出してプロットした。左の図2が日本、右の図3が全体平均である。 図1とは横軸のスケールが違う事に留意。

分析シリーズその11でも述べたように、日本ではチャットとメールの割合が入れ違いになっている以外、2012→2018の間にはほとんど変化がない。
一方で、全体平均を見ると、チャット(7→31%)、勉強のためのネット閲覧(14→27%)、校内ウェブサイトの閲覧・ファイルアップロード・ダウンドード(7→17%)と変化が見られる。
つまり、日本は少なくともPISA3回分の時間、ICTの利活用について、何ら新しい事をしていない、ということだ。技術革新が加速するなか、それでも教育領域の変化は緩やかなほうだが、日本のこの9年の停滞は、かなり大きなダメージになっていると思われる。

ネットで課題提出は当たり前

図4・5 PISA2012~2018 学校でのデジタル機器利用の推移
(デンマーク・オーストラリア)

前回同様、比較的高水準にある国の特徴を見てみよう。図4と5はそれぞれデンマークとオーストラリアのデータを示した。図1とは横軸のスケールが違う事に留意。
いずれの国も「チャット」よりも「勉強のためのネット閲覧」の数値が高いことが特徴である。また、「コンピュータでの宿題」「校内ウェブサイトの閲覧・ファイルアップロード・ダウンドード」「共同作業」などの数値が高い。
つまり、学校で扱う教材・課題・連絡・協働作業等が日常的にオンラインで扱われる事を示している。

分析シリーズその3でも示したように、デンマークの校内・校外の利用頻度は他国よりもかなり高いが、学習用途のPISA2012→2018の変化を見ても、複数の項目で20%以上数値が上昇していることが分かる。

興味深いのは、オーストラリアではメール利用が上から2番目なのにデンマークでは下から2番目であることだ。
これにはちょっとした理由がある。デンマークは1990年代から学校向けに教職員・児童生徒・保護者をつなぐオンラインサービスを運営しており、SkoleIntraと呼ばれてきた。
SkoleIntraは元々は電子掲示板(Macintosh向けのFirstClassというシステム)だが、紹介サイトを見ると最近はGoogle AppsやMicrosoftのOffice365と統合され、かなり使いやすくなったようだ。

図6 デンマーク SkoleIntraの画面 (2013)

優れた校内イントラのシステム(今ならば、Google ClassroomやClassiだろうか)が、児童生徒の学習シーンと上手く同期すれば、メールベースでファイルをやり取りしなくてもよいという事例だ。

ちなみに、最近の記事によるとデンマークは2019年10月以降、長らく利用してきたSkoleIntraから新しいAulaというプラットフォームに置き換えを図るようだ。

10年何もしてこなかったツケは大きい

分析シリーズ3回分、すなわち、生徒の私用(IC008)・校外での学習(IC010)・校内での学習(IC011)へのデジタル機器活用の傾向でいずれも明確に示されているのは、世界は着実に歩みを進めているのに、この国の教育とICTに関しては、ほぼ10年以上何のポジティブな働きかけも出来ていないし成果もない、という重い事実である。


まとめ

  • IC011は学校内のデジタル機器利用頻度(学習用途)について尋ねる項目群
  • 日本はチャット利用以外、全ての項目が10%以下で、しかもPISA3回分ほぼ変化がない。
  • 高水準にある国は、ネット閲覧、PCでの宿題、校内サイトの閲覧・ファイルアップロード・ダウンロード・協働作業などの数値が高い。

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