ICT態度は最下位ながら少し改善

PISA2018分析シリーズ その14

PISA2018分析のもくじはこちらその13からの続き

IC013~16はICTの利用経験から態度を問うもので、IC013が「ICTへの関心」IC014が「ICT能力の自己評価」IC015が「ICTへの態度」IC016が「ICTと友人」の項目群となっている。

デジタルメディアやデジタル機器を使った経験について、次のことはあなたにどのくらいあてはまりますか。
(ここでデジタル機器とは、携帯電話、デスクトップ・コンピュータ、ノート型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、スマートフォン、ゲーム機、インターネットに接続しているテレビなど様々なものを指します。)

回答選択肢は、 ① 全くその通りでない ②その通りでない ③その通りだ ④全くその通りだ の4択。
この項目群はPISA2015以降継続調査されている。 分析では、選択肢番号から1を引いたものを合計して、IC013~16の各尺度スコアとしたものを用いる。

IC013 ICTへの関心

IC013の項目群は次の6項目で構成されている。

  • 時間のたつのも忘れてデジタル機器を使う
  • インターネットは、ニュースやスポーツ、辞典など私が興味のある情報を得る上で、優れた情報源である
  • インターネット上のソーシャル・ネットワークはとても役に立つ
  • 新しいデジタル機器やアプリケーションを見つけると興奮する
  • インターネットに接続できないと気分が悪い
  • デジタル機器を使うのが好きだ

IC013尺度スコアのレンジは0~18で、中央の9より上がポジティブ、下がネガティブになる。図1に結果の国別平均値を示す。 横軸の交点を全体平均に設定している。

図1 PISA2018 IC013 ICTへの関心尺度の国別平均

日本は下から2番目で10.18だった。ちなみに最下位はジョージア(9.84)、平均は11.44、最上位はシンガポール(12.84)。日本の数値は尺度の絶対値から見ればポジティブだが、他国と比較するとかなり低いことが分かる。

IC014 ICT能力の自己評価

IC014の項目群は次の5項目で構成されている。

  • めずらしいデジタル機器を使うのは気分が良い
  • 友達や家族・親戚が新しいデジタル機器やアプリケーションを購入する際に、アドバイスすることができる
  • 家でデジタル機器を使っていると気分が良い
  • デジタル機器に何か問題が起こっても、それを解決できると思う
  • 友達や家族・親戚のデジタル機器に何か問題があれば、彼らを助けることができる

IC014尺度スコアのレンジは0~15で、中央の7.5より上がポジティブ、下がネガティブになる。図2に結果の国別平均値を示す。 横軸の交点を全体平均に設定している。

図2 PISA2018 IC014 ICT能力の自己評価尺度の国別平均

日本は最下位で6.68だった。ちなみに平均は9.53、最上位は英国(10.59)。調査国のなかで日本だけがネガティブな数値だ。ICT能力の自己評価は著しく低い。

IC015 ICTへの態度

IC015の項目群は次の5項目で構成されている。

  • 新しいソフトウェアが必要になると、自分でインストールする
  • デジタル機器に関する情報は、他の人に頼らないで自分で読む
  • デジタル機器は自分が使いたいから使う
  • デジタル機器に問題があれば、自分の力で解決しようとする
  • 新しいアプリケーションが欲しいときは、自分で選んでいる

IC015尺度スコアのレンジは0~15で、中央の7.5より上がポジティブ、下がネガティブになる。図3に結果の国別平均値を示す。横軸の交点を全体平均に設定している。

図3 PISA2018 IC015 ICTへの態度尺度の国別平均

日本は下から数えて9番目で8.78だった。ちなみに、最下位はスロバキア(8.24)、平均は9.36、最上位はドイツ(10.53)。ICTへの態度は他国と比べると消極的である。

IC016 ICTと友人

IC016の項目群は次の5項目で構成されている。

  • デジタル機器について何か新しいことを学ぶために、友達とそれらについて話をするのが好きだ
  • デジタル機器の問題を解決するために、インターネットで他の人と意見や情報を交換するのが好きだ
  • 友達と集まってコンピュータやビデオゲームで遊ぶのが好きだ
  • デジタル機器に関する情報を友達と話し合うのが好きだ
  • 友達や家族・親戚と話をするとデジタルメディアについて多くのことが学べる

IC016尺度スコアのレンジは0~15で、中央の7.5より上がポジティブ、下がネガティブになる。図4に結果の国別平均値を示す。 横軸の交点を全体平均に設定している。

図4 PISA2018 IC015 ICTと友人尺度の国別平均

最下位は日本(6.37)、平均は8.25、最上位はアルバニア(9.60)だった。日本以外に尺度の絶対値でネガティブだったのは、チェコ、ドイツ、韓国、ルクセンブルグ、スイス、ベルギーである。ベンチマークでピックアップした国は全体平均よりも低いケースが目立つ。

PISA2015と比較すると少し改善

図5 PISA2015・2018での各尺度の比較

図5で、PISA2015の尺度平均値と比較してみよう。黄色が日本の平均値、灰色が全体平均を示している。PISA2015は全ての尺度が最下位だった。全体平均にはほぼ変化がないが、日本の数値はやや右へ移動しているので、多少改善していることになる。

日本の学校では、ほとんどICTを扱わないからといって、子ども達の態度に直接影響が及ぶとは考えにくいが、現実としては、ICTへの態度は他国から見てもかなり消極的で、ポジティブな側面を見出し得ていないことが分かる。
これは、事あるごとにICTへのネガティブな価値観や評価を子どもへ刷り込んできた結果とも言えるし、学校に限らず、マスメディアや社会的価値判断の基準が、慎重かつネガティブであることを背景として考えざるを得ない。

まとめ

  • IC013~016はICTの利用経験から態度を問う項目群、5~6項目からなる尺度として構成されている。
  • いずれの尺度も全体平均より日本は著しく低く、消極的な態度が明らか。
  • PISA2015と比較すると、全体平均はほぼ変わらないが、日本の数値は若干改善している。

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